断崖と滝の円形劇場 トルラ〜オルデサ渓谷
年月日 2010年7月21〜22日
天気 21 曇り時々晴れ、夕方雨、22 雨のち曇り、夕方晴れ
タイム Camping Aneto(8:37)=Ainsa(9:45)=Torla(10:50)=Camping Ordesa(11:10/12:05) =Torla Visitor Center(12:15/12:30)=Pradela de Ordesa(12:50/13:00)…Cascade de Cotatuero下の小屋(14:15/14:20) …トレールを少し進み戻る(14:50)…岩場の手前で引き返す(15:32)…Pradela de Ordesa(16:58/17:05) =Torla(17:25//8:45)=Pradela de Ordesa(9:02/9:10)…Cascada des Estrecho(10:10/10:25) …Cascade Cola de Caballo(12:30/12:45)…Refugio de Goriz(14:05/14:30)(2200m)…Faja de Peril を止めて川を渡渉(16:15)…Pradela de Ordesa(18:05/18:15)=Torla(18:35)

de Cotatuero滝下から登った所、周囲は迫力満点の断崖が続く
 4泊もしたCamping AnetoとBenesqueに別れを告げ次の目的地Torla(トルラ)へN-260を走る。Torlaに滞在してMonte Perdido(ペルディド山)(3355m)にも登頂することも考えていたが、体力・天候・日程も考え、初めてのピレネーをなるべく欲張ってあちこち巡る方を優先する。峡谷沿いの狭い道になり、トラックなどスペイン人の運転は乱暴なので慎重に行く。一旦ピレネーから遠ざかる感じで、左に広がるスペイン内陸部は青空が広がりとても乾燥した気候を伺わせる。乾燥した大地に古城が点在し、相当に荒れ果てたものが多いがこれもスペイン情緒の1つという感じ。道路が改修され広い快適な道になったかと思うとまたカーブの多い山岳道路になる。再びピレネー山地へ向け高度を上げると上空には雲が増えてきた。
 Torlaの街はVisitor Centerの前にかなり広い駐車場が作られ、駐車場所には困らない。雲が多いもののここから渓谷の断崖が一部望め、それを背景に古城の遺跡がそそり建つ。早速Informationに立ち寄る。見どころであるオルデサ渓谷の入口Pradela de Ordesaへはマイカー規制が行われていて、ここから往復4.5Euro払ってシャトルバスに乗る必要がある。キャンプ場は上流側に多数あり、昨日頑張ったので今日はゆっくりしようと、市街地に近いCamping Ordesaに申し込んだ。Camping Anetoより少し安い15.75Euro、時間が早いのでシャワーやスーパーに近い区画を割り当ててくれた。あまり広くなくて周りは子供連れの家族などが多くて落ち着かない。雨は降ってないし時折晴れ間も見られるし、明日の天気の保障もないので、明日予定していたオルデサ渓谷に下見がてら行ってみることにする。
増水で迫力満点のEl Estrecho滝
 シャトルバスは20〜30分おきにピストン運行され、右側の座席からは屏風状の岩壁が車窓から楽しめる。山の上部は雲がかかっているが、下部の見ごたえある絶壁の様子は概ね望むことができた。終点は広い駐車場があって、規制が無ければここまで車で来るはずだった。案内所でサブルートの短めのお勧めコースを聞いて、Circo de Cotatuero(円形圏谷地形をスペイン側ではCircoと言う)の滝の付近へ向かうことにした。日本語Website(ピレネー山脈彷徨)に、付近の円形劇場の一角のピークTozal del Mallo(2254m)へ登った記録があったのが念頭にあり、結構厳しい岩場があるようなので登らないにしても様子ぐらいは見に行きたいと思っていた。ただそのReportを印刷したものを今日は持って来るのを忘れたので、同じ場所かどうかわからない。GR-11になっている渓谷沿いの広い道は、出だしからお花畑を前景に岩壁を見上げるなどなかなか良いが観光客も多い。先で左にサブコースに入ると稀に人に会う程度で、一転静かな山歩きができる。
 Cascade de Cotatueroの滝の下に休憩小屋があり、絶壁の際をトラバースする道が横切っていて、案内所の人がトラバース道は雨で滑りやすいと言っていたので少し様子を見てくるが、良い道が続いていて問題ないようだ。オルデサ渓谷の両岸は氷河が削った屏風状の絶壁2〜3段になって延々と続いているのがわかる。さらに上部へ岩登りでロープ等装備が無いと危険と記された道が続いており見に行ってみる。道は岩場を避けてジグザグに高度を上げ、滝の展望台を過ぎると所々岩場が出てくるが簡単なので先へ進む。たいぶ標高を上げた所で鉄くいの足場と支点が打ち込まれた垂直の岩場直下に出て、登れないことはないが単独では危険と見て引き返すことに。周囲の景観もますます迫力満点であった。戻ってから例のWebを印刷したものをチェックすると、報告は私が登ったのと異なり、駐車場から少し戻った所から登るClavijas de Salaronsであった。岩場の上部は台地上の平坦な地形になり、お花畑の踏み跡を伝って両者を行き来することもできるようだ。
円形劇場地形の先端に位置するCola de Caballo滝
 Torla(トルラ)の街は、車道から石畳道を登っていくと両側に石垣の店や家が立ち並び、小さな街なので少し歩くと車道に出てほぼ全貌がわかる。何本かある脇道の1つに入ると、バイパスの車道トンネルの上に建つ古城の遺跡博物館があって、建物と山の展望が良い。スーパーはBenesque(ベネスケ)と同様品数はあまりないが、焼きたてのフランスパンが手に入ったのは嬉しかった。夕方からは時々激しい雷雨に見舞われ、これまでより天候が不安定である。BAR Resutaurantはどこも8時からでないと食事ができず、しばし付近をぶらついて時間をつぶす。やっと食事にありつき、地元産の羊の腸詰めやチョリソーなど肉料理と野菜盛り合わせ、ワインとビールも頼む。黒こげでちょっと野生的な味だがワインにも合い、これまでスーパーで巨大な塊が売られているのを見るだけだったのを食すことができて良かった。オリーブの漬物とオリーブオイルも必ず出てきて、これだけ頼んでも30Euroで済み良心的だと思う。評判良いのか店内はまもなく席が埋まり、席を待つ人も出るほど。
 夜半から朝まで断続的な雨模様で、この日はGR-11ルートをRefugio de Goriz(ゴリッツ小屋)まで日帰りで往復のロングコースを予定していたがこの天気は残念。しかし午後は回復傾向という予報に期待してゆっくりめに出発。雨はなかなか上がらないので、幅広のメインコースから沢へ下って、三つの滝を鑑賞しながらゆっくり歩いた。雨ということもあり歩いている人は少ない。雨の為水量が多くて迫力があり、三番目のCascada des Estrechoは滝つぼの前まで下ることができ、たっぷり水しぶきを浴びる。青、黄、ピンクにまざってウスユキソウのような白い大きな花(青アザミ)を見て、沢沿いをゆるく登っていくと広い草原に出る。雨は上がったが周囲の山はガスに包まれている。ハイマツのような潅木が一面に黄色い花を咲かせて山肌が黄色に染まっているのが見事、名前はアリゾンというそうだ。
Cola de Caballo滝の巻き道より、Monte Perdido(3355m)方面が次第に晴れてきた
 オルデサ渓谷の両岸の岩壁が前方で半円形状に取り巻くCirco de Soaso、まさにオペラ劇場の観客席の形をしていて円形劇場と言うにふさわしい所。中央をCascade Cola de Caballoという幅広の美しい滝が流れる。滝の前にかかる橋を渡り、岩登りマークが記された直登ルートが分岐するが誰も取り付いている人はおらず、一般ルートを行くと右へ大きく巻いてジグザグに登って断崖の上に出る。ちょうどガスが上がり始めて少しずつ周囲の山も見え始めてきた。2〜3段の断崖が見事な半円形で周囲を取り巻き、沢が流れる部分は侵食された垂直の岩壁にはさまれた峡谷から滝が流れ落ちている。直登ルートとあわせ草原上のお花畑、そして2段目の崖は巻くことなく簡単に上に出られ、再び広い草原状を行くと前方にRefugio de Goriz(ゴリッツ小屋)が見えてくる。追いついてきたスペインの3人組はテント泊でMonte Perdidoを目指すようだ。Refugio de Gorizはトレッキングや登山者に人気がありかなか予約が取れない所らしい。規則上はキャンプ禁止であるが1泊ならビバークと見なして黙認という話で、テント泊のパーティも見受けられた。小屋の中も見に行くと、既に沢山のトレッカーで賑わっていた。
 同じコースの長い下りにかかる。次第に雲が晴れてきて小屋の上にも何段にもなった崖が複雑に折り重なり、そのさらなる高みにはいくつかのピークが見え隠れしている。最も高い丸いピークが見えそうになりカメラを抱えてしばらく粘る。完全には晴れなかったが雲の間から雪渓を従えたピークの姿を見ることができ、Monte Perdido(ペルディド山)(3355m)の頂上か直近のピークであることは間違いなさそう。Circo de Soasoの断崖の巻き道からは、行きに雲で隠れていた円形劇場とその上が草原帯となった特異な地形の全貌が眺められ、造形の不思議さに酔う。下りは対岸の崖下をトラバースするFaja de Perilという別コースを通ろうと思ったが、入口に危険のため15時以降は入山禁止と書かれ、もう16時であったので遅くならないためにも行きと同じ道を下ることに。橋まで戻るのは遠回りなので対岸へ沢を渡渉して近道をする。円形劇場の壁に囲まれた景観を違った角度から何度も振り返り見つつ、帰路を急いだ。滝への寄り道をしないGR-11の最短ルートは、単調で飽きてくるジープ道であるが2時間弱でシャトルバスの乗り場に下りついた。

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