Aneto(アネト山)(3404m)登頂
年月日 2010年7月20日
天気 晴れ、午後一時雷雨
タイム Camping Aneto(4:00)=Pllan de l'Hospital(4:30/5:25)=La Besurta(5:35)(1900m) …Refugeo de la Renclusa(6:18/6:28)(2140m)…雪渓でアイゼン装着(7:55/8:08) …Portillon Superior(9:10)(2880m)…頂上手前Col(10:40/10:47)(3180m)…Paso de Mahoma岩場手前(11:30) …Aneto(11:40/11:55)(3404m)…Portillon Superior(13:50)…Refugeo de la Renclusa(15:40/15:50) …La Besurta(16:30/17:02)=Pllan de l'Hospital(17:12/17:20)=Camping Aneto(17:35)

Portillon Superiorのコル付近はピネクルが天を突き険悪な様相を呈している
 未明の4時にキャンプ場を出発、実は夜間は車での出入り禁止と説明に書いてあったのだが、ゲートは開いたままなので事実上ここは自由に出入り可能。対向車もない暗やみの広い道路を飛ばしていくと突然道路が無くなってしまい、Uターンしていくと途中で右に狭い道に入る所で標識を見過ごしていた。山岳リゾートホテルの手前にあるPllan de l'Hospitalの駐車場で雪山対応の服装に着替えて、ピッケルアイゼンも持って、誰も居ないゲート前のベンチで5時に来るはずのバス待つ。時間より早く大型の観光バスが到着、登山装備の乗客が2名、このバスがLa Besurtaの登山口へ行くのかとあわてて乗り込もうとすると、運転手がスペイン語で何やら説明するのだがさっぱりわからない。「わかった!乗れ!」というような手招きをするのでバスに乗り込んだものの、いきなりUターンして逆方向へ行こうとするので、それはまずい!とあわてて下ろしてもらう。が〜ん!慌ててストックをバスに置き忘れてしまった。買い換えて1年経ってないのに遂にここでお別れか、何だか幸先が悪い。バスの時間は過ぎているが、車で来た登山者が1人2人と集まってきた。時刻を20分も過ぎてさっきのバスが再びやって来て集まった他の登山者とともにバスに乗り込む。
Glaciar de Aneto(アネト氷河)の広大な雪の斜面の先にAneto(アネト山)(3404m)のピラミッド状の姿
事情は判らないが、ストックも無事戻ってきてLa Besurta(1900m)の登山口に到着(後から思うにバス時刻は5:00と5:30の2本書いてあったが、客が少なかったので5:00は運休にして5:30の1本にまとめたのではないか。客が無しでも時刻通り走る国と違いこれがスペイン流か)。
 長い1日になるはずなのでヘッドランプを付けて早速出発。上空は昨日までより雲が多いものの晴れている。Refugeo de la Renclusa(レンクルサ小屋)(2140m)までは明瞭な歩道で迷うような所は無い。前後に2組ほど同じバスで来た登山者のライトが見える。小屋に泊まってAnetoを目指す人はほとんど出発しているのだろう、明るくなってきた為か先行者のライトはほとんど見えない。お花畑から岩のゴロゴロしたガレ場風の斜面を行く。踏み跡が不明瞭な所が多く、ケルンや目印を頼りに進む。先行する2人と5人の2パーティーが見える。雪渓の下で彼らはアイゼンを装着していたので私もそれに習って付けた。雪渓はさほど急でもなく踏み跡も固められ、また雪が無くなって岩の上を歩く箇所もあり、アイゼン無しでも良かったと思う。先行の男女2人組の女性のペースが遅いので抜き、稜線に近づいた所でアイゼンをはずした。
最後の難所Paso de Mahomaの岩場
この先Portillon Superior(2880m)のコルを越えて稜線の反対側に出るのだが、直進すると岩場が厳しそうで先行者は左へ戻る感じでルートを探している様子。私もその方向へ向かいやぐらが見えたので目印だと思って向かうとそこはほぼ稜線上で先は絶壁のため進めない。先行者も見失なってしまった。稜線に上がりすぎたと考え下ってトラバース気味に進むと雪渓上に足跡を発見した。 コルは急でガレ気味の岩場を落石に注意して通過、ルートは明瞭で難しい所は無い。ここまで地図上のルートとはだいぶ異なり下側を通ってきた感じ。登山口の谷を隔ててフランス国境稜線のPerdiguero(ペルディゲーロ)山域方面、Pico de Puerto Viello(2842m)からPico de Malpas(3096m)辺りであろう、多数の峰々が続いているのも眺められた。
 コルを稜線の北側に抜けるとGlaciar de Aneto(アネト氷河)の広大な雪の斜面が広がっている。通過したコル付近は、稜線上のピネクルが天を突き険悪な様相を呈しているが、コル直下まで傾斜の緩い部分をトラバースするルートが作られている。幸いなことに上空の雲も晴れて天候は良好。右の稜線上に聳える幾つかのピークの奥に、ひときわ高くAneto(アネト山)(3404m)のピラミッド状の姿を初めて目にする。
眼下にIbons de Coronesの氷河湖群(一昨日訪れたVillibuerna方向からの登路にあたる)を見下ろす
雪の斜面と岩場を上がるルートが大体わかり、さほど困難な箇所は無いようだ。雪上を延々とトラバースしていくトレースが見渡せ、先行者が6,7パーティー程、早い組は既に最後の登りにかかっている。右手の稜線部を見上げると切り立った岩壁が氷河の端から露出して迫力満点。ただし雪の上は傾斜が緩く危険なクレバスも無し、標高ほぼ3000mで涼しいので疲れを感じない。隣の山域となるTuc de Molieres(3013m)方面に3000m弱クラスの山なみが楽しめる。Pico de la Maladeta(マラデタ山)(3308m), Pico Abadias(3271m), Pico Maldito(マルディト山)(3350m)の険しい岩壁の下を順にトラバースしていくと、頂上手前のCol直下の平坦部に到着。一休みして最後の登りにかかる。稜線の正面岩壁を左に巻いて雪の急斜面を登るトレースが3本位付いていて、好みのルートでピッケルを使って登る。雪壁を登り切るとガレ場状の斜面をジグザグに上がっていく。高度の影響も出てきて深呼吸を交えて登る。他のパーティにもあまり山慣れしていないのかかなりペースダウンの人が居る。
Pico de Maldito(マルディト山)(3350m)やPico Maladeta(マラデタ山)(3308m)の勇姿
 登り切った場所が山頂かと思いきや、最後の難所Paso de Mahomaの岩場が待ち構えていた。十字架の建つ目前の頂上まで、30mほどのヤセ尾根の岩稜を通過するのだ。 上から若い男女がビレー無しで下りて来たが、女性の方が難儀している。後続のロープでビレーしたパーティーを待って、次は私がビレー無しで挑戦する。高度感があって鎖や支点が何も無いので緊張するが、ホールドになる岩角なども多く、モンテローザ稜線部の2級の岩場を一部持ってきた程度。特に難儀することなく登頂達成! 雲が増えてきたものの眼下のIbons de Coronesの氷河湖群(一昨日訪れたVallibierna方向からの登路にあたる)やPico de Maldito(マルディト山)(3350m)からPico de la Maladeta(マラデタ山)(3308m)へ連峰の勇姿、Salenques山脈など展望を満喫。特に大きな氷河があるわけではなく、景観は日本の穂高や剣に似ている感はある。でもそのエリアはずっと広大で、ここから見える山々もほとんどが未開拓で山頂への道も無い、スケールの大きさを痛感する。残念なことにPosets(ポセッツ山)(3375m)方面は雲が出てきて遠望はきかず、一昨日眺めたこの方面の景観を想像する。
山頂の先はPico de Tempestades(3278m), Pico de Margalida(3239m)方面へ厳しい岩稜が続く
到着時は山頂には誰も居なかったのが、山頂の反対側から岩登り装備の2名がひょっこり歩いてきた。山頂の先、登ってきたのと反対側の稜線はPico de Tempestades(3278m), Pico de Margalida(3239m)へ続き、地図にルートも載っておらず見た目も厳しい岩場が続いていて、彼らが縦走してきたのかどうかは不明。通常ルートから後続の3人は1人がガイドらしく、他の2人をロープで確保して登ってきた。十字架の前で記念写真を撮ってもらう。さらにガイドに確保されて登ってくる人を待って下山にかかる。こういう人は慣れていないのか、結構悩みながらで時間がかかっている。私は下りもほとんど躊躇することなく通過できたので岩場としては易しいはずだ。
 あとは同じルートを戻るだけなのでだいぶ気は楽になる。雪がだいぶ緩んでいるのでアイゼンは使わずに行く。出発の遅い組が未だ登ってくるのに会う。Portillon Superiorのコルを越えるあたりから雨模様になり雨具を付ける。雪渓上の下りはとても早いが、岩のゴーロ帯になるとルートに迷ったり岩を乗り越えたりして時間がかかるのでうっとうしい。ガイド登山ではコルから直線的に下ってしまう場合もあるようでその方がだいぶ早そうだ。途中激しい雷雨に見舞われたため、念のため岩陰に避難してしばらく行動を中止。 まだ上の方にいる登山者は避難場所が無くて怖い思いをしているのでは。
山頂の十字架の前で
少し待つと雷雨は収まって再び青空が覗いてきた。Refugeo de la Renclusa(レンクルサ小屋)も近づきお花畑になると、道が幾つもあって沢の方に下りすぎてしまい行き詰る。少し登り返すと小屋が見えたので、その方向に適当に歩いて小屋に到着。先ほどの雷雨のせいかハイキング客も退散して静か、だいぶ疲れているがもう先は見えているので重い腰を上げる。La Besurta登山口に無事下山、テーブル・ベンチと売店があり、日中は40分間隔位にピストン運行しているバスの発車まで、再び晴れてきたPico de Paderna(2622m)のピラミッド姿など山々を眺めながら足のマッサージなどして疲れた体を癒す。Benesque滞在も今晩が最後、親しみ深くなった街の見納めに一周してから、Bar(バル)で大ジョッキとPlato料理を楽しんだ。街からキャンプ場までわずかな距離の間だけは飲酒運転やむを得ず、になってしまっている。

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