バリビエルナの谷 GR-11ルート中でも生粋の美しい谷
年月日 2010年7月18日(日)
天気 晴れ
タイム Camping Aneto(6:45)=Senarta(7:00/7:35)=Refugio de Corones(7:58/8:16)(1930m) …Plleta de Llosas(9:14/9:25)…Ibon Baixo(10:05/10:33)(2380m)…Ibon Alto(11:15/11:20) …Coll de Vallibierna(12:00/12:18)…Plleta de Llosas(14:15/14:25)…Refuge Del Cornes(15:15/15:57) =バスが故障(16:10/16:25)…代わりのバスが来る(17:50)=Senarta(17:57/18:04)=Camping Aneto(18:15)

3兄弟の岩峰ピークTuca Arnau(2814m), Pic de Vallibierna(3056m), Tuqueta de Muidors(2939m)
 Informationの天気予報によると明日までは好天、明後日以降は下り坂に向かう。山に来て涼しくなったこともあり、睡眠時間も長く取れるようになってきた。山の初日であるので、今日Vallibierna(バリビエルナ)の谷で足慣らしをして、明日本命のAneto(アネト山)(3404m)を目指そうと考える。Senartaの駐車場まで車で行き、ここでA-139から分岐して谷に入る道にはゲートがあって一般車は入れないので、Benesqueから来るバスを待つ。やって来た小さめのバス1台は乗客ゼロで、ここでスペイン人女性5人グループと私が乗った。車窓からはTuqueta Bllanca(2607m)などの白い岩壁が眺められ楽しめる。終点Refugio de Coronesは標高1900m、無人の小屋があるだけで、針葉樹と草原帯につつまれ既に高山の雰囲気満点だ。雲ひとつ無い絶好の天気、頭上にはTuqueta Bllancaの岩壁が聳え、前方にはTuqueta Bllanca de Vallibierna(2790m)が荒々しい姿を見せている。早朝のバスで来たのだろうか既に何人か人が居て、歩きに行くというよりは付近でのんびりしているようだ。一緒のバスを降りた5人組も特に目的の場所は無いと言う。
 私は1人GR-11ルートに沿って行ける所まで、Coll de Vallibierna(バリビエルナのコル)(2732m)あたりまでを目指して歩き始める。直ぐに左右に道が分かれ、左はIbonet de Corones(コロネス湖)から比較的登りやすいというPico de Araguells(3044m)などへのルート。この谷からAneto(アネト山)へ登るルートもある。白と赤のペンキ目印が付けられたGR-11は右へ幅広い道が続いている。
広大な磨かれたスラブ状の岩の斜面上に連なるAnteo連峰は圧巻
前方には岩肌をあらわにしたドーム状のピークTuca Arnau(2814m), Pic de Vallibierna(3056m), Tuqueta de Muidors(2939m) が3兄弟という感じで並んで聳えている。道の両脇に咲く花の種類がとても多い。訪れる人も少ない楽園に早くも歩みを進めるのを忘れてのんびりしてしまう。右へ Pic de Vallibierna(3056m)へのルートが分岐するはずだが、それらしき道は見つからない。Informationでもらった案内図では易しいコースとして紹介されているが見た目は岩場があり難しそうに見える。メインコースをちょっと外れると踏み跡も不明瞭で自分でルートを選ぶような所なのだ。Plleta de Llosas(2200m)のモレーン下の広い湿原状の所に標識があり、左へIbon de Llosas(ルロサス湖?)への道が分かれる。奥にはAneto連峰が切り立った岩肌を見せて聳えている。なかなか険しそうではたして明日登ることができるんだろうか。道からはずれた上のほうに避難小屋があるようで、男性が1人、汲んだ川の水を持って上がっていく。目的はわからないが歩き回る様子もなく付近でのんびりしている様子。単独で行動することが多いと言うバスク人なのか。
 GR-11は右寄りの谷を上がっていく。道は踏み跡程度のところもあり、沢を渡渉し、所々ルートをはずれないよう注意して行く。登るにつれ展望はさらに広がり、特に広大な磨かれたスラブ状の岩の斜面の上にRusseli氷河の雪渓を従えて連なるPico de Tempestades(3278m), Pico de Margalida(3239m)など、主峰Anteo(アネト山)(3404m)に向けて切り立った岩場を見せて連なる岩峰群は圧巻。細長いIbon Baixo(バイッソ湖?)(2380m)に来ると左の岸沿いに道が続き、その先は湖が広くなり前方のCap de Llauset(2854m)とその左の2953mピークあたり湖面に映る佇まいが素晴らしい。後方にはBenesqueの谷を隔てた反対側の山域を代表するPosets(ポセッツ山)(3375m)が姿を見せた。カールを持つ美しい山容だ。トレッカー2人組が重装備を背負って逆方向からきた。トレール走破をめざすのだろう、これまで会った人とは対照的に足早に通り過ぎていく。日が昇るにつれ暑さが増してくる。苦手の虫も気になるがそれほど多くはない。碧い湖面を見ながら先へ進むと、垂直の小岩壁の岩陰になる涼しい広場があり大休止。ここは暑さからも解放され、湖や快晴の山々をのんびり眺められる天国の岩陰、今日は景色の美しさにため息の連続である。
周辺の山が湖面に映る佇まいが素晴らしいIbon Baixo(バイッソ湖?)
 岩のゴロゴロした緩い下りでは踏み跡が不明瞭で何回か道を失い、あまり気軽に歩けるコースでは無いといえる。もう一つ上にあるIbon Alto(アルト湖)付近からは雪も現われた。さらに峠越えとなるColl de Vallibierna(バリビエルナのコル)(2732m)を目指すと踏み跡はますます不明瞭、前方のコルは結構険しい岩場の様相で、右方向の方が登り易そうだなあと考えていると、岩場を下ってくる人が見えたのでルートは合っているようだ。2組ほど逆からのトレッカーに会うと、その後はまた人の気配の無い静寂の山々だ。長い雪渓を横断すると最後の岩場の急斜面、ルートは明瞭であり落石だけ注意すれば簡単に登れた。コルは風が通り抜け、ここまで上がってくるとかなり涼しい。初めて稜線の反対側の景観を目にすると、この先も湖が点在し岩と緑の峰々が延々連なっている。しかし何といってもここまでAnetoとPosetsを中心に周辺の岩峰の展望がここのハイライトだ。Posetsは一段とせり上がって、立山か黒部五郎岳を連想させるような堂々たる山容を見せてくれた。反対からクライマー風の登山者が来て、ここで休むことなく稜線右側のガレ場をトラバース気味に上がっていった。ルートに踏み跡のようなものは皆無である。Pico de Russell(3208m)方面のピークを目指すのだろうか。稜線は岩が積み重なり、稜線通しの通過は困難である。トレッキングコース以外、付近の山は全て自分でルートを選んで登る世界である。
堂々たる山容を見せてくれたPoset(ポセット山)(3375m)
 来たコースを忠実に戻る。地図を見てIbon de Llosasの方を回って行けないかとも思ったが、思ったよりここまで時間がかかったし下手にルートを外れると迷いそうである。景色のほかに花々も楽しみつつのんびり下った。リンドウ、ツツジ、アサツキのような球状に集まった淡いピンクの花、ハクサンフウロに似た花、ミヤコグサのような黄色の花が多く、他にも多くの黄、白、青色が目を楽しませてくれ、本当に花の多い所だ。下りでも人に会うことは少なく静かな楽園を堪能できた。出発点に帰り着くと、Ibonet de Coronesの方から下ってくる登山者が多くて今朝とは一変、バスを待つ登山者が大勢たむろしていた。老若男女さまざまで、皆ピッケルを持ちザイルや登攀具を持つ人も居て顔なじみの団体登山かツアー登山らしい。何人かに話しかけるも英語は全く通じない。身振り手振りで皆Anetoに登山したらしいことは何となく理解、さほど山慣れた感じでない人も多く、これなら私でも登れるかと思うが、日曜日ということもあり山頂はさぞ混雑したことだろう。
 このあと思わぬトラブルとなる。やってきた16時発のバスは行きと同じ小さいもので待っていた人は一斉に殺到し、私も何とか乗り込んだものの席には座れず。一部の人は諦めて2時間後のバスを待っている。超満員の乗客を乗せたバスがガタガタの悪路をノロノロ運転で10分ちょっと走ったところで故障して立ち往生。運転手はしばらく車の底をいじっていたが手に負えないという風で携帯で会社に救援を要請。スペイン語で運転手が乗客達と何やら話していて、歩いた方が早そうというのだろう、皆諦め顔で歩いて下り始めた。地図で見ると3時間近くかかりそうだが私も諦めて歩く。これでは帰りが遅くなり、街で追加の買い物もしたいし明日Anetoに登るには4時のバスに乗らねばならず、天候もあさってまでは何とか持つ感じだったので、歩きながら明日のAneto登山は1日遅らせようと考えた。暑い林道を歩くのはなかなか苦痛、既に登山で体力を使い果たして途中でへたっている人達も。救いは林道から深く侵食されたい渓谷の断崖や滝など景観を楽しめたこと。高度を下げて終点のキャンプ場も見え始めた頃、救援の大型バスが来て歩いている人を次々に拾ってくれたが、数分で駐車地に着く。明日の諦めがついたので、シャワーをあびてBenesqueの街へ繰り出す。周辺の地図(知人から借りたのはスペイン語のみだったが新版は英仏西3ヶ国語ガイド付き)や食料の買い物のあと、広場にテーブルを拡げたBar(バル)へ。1人でも気軽に座れ、Platoというアラカルト方式で好みのメニューを楽しめ、肉、ポテトなどに必ずオリーブオイルが出てきて好きなだけかけ、サラダにはオリーブの実が山盛り、大ジョッキとパンをプラスすれば夕食は十分。これだけ食べても20Euro以下で済んだ。店で飲むアルコール代が日本より格段に安いのが嬉しい。ディナータイムには未だ早いので、周りはカフェなどでダベッているか、山盛りのムール貝とかポテトなどで軽く一杯という人で、日本人1人がかなり浮いていたのだろう。

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