荒れ模様のマウントクックでトレッキング決行 山岳博物館も
年月日 2010年1月7〜9日
天気 7 雨,8 曇り時々晴れ にわか雨,9 曇りのち時々雨か雪
タイム Glentanner(9:05)=Mt.Cook Visitor Center(9:25/11:22)=The Hermitage(11:30/12:05)
=White Horse Hill(700m)(12:15/12:40)…Hooker Glacier Lake(880m)(14:20/14:30)
…White Horse Hill(16:00/16:20)=Mt.Cook Village(16:30/17:00)=Glentanner(17:20//8:30)
=Mt.Cook Village(680m)(8:50/12:25)…Red Tarns(1070m)(13:08/13:15)
…Sebastopol Peak(1468m)(14:18/14:35)…Red Tarns(15:20/15:35)…Village(16:03/16:35)
=Tasman Road End(16:50/17:20)=Glentanner(17:50//6:10)=White Horse Hill(6:30/6:40)
…Sealy Tarns(1300m)(7:50/8:00)…Mueller Hut(1800m)(9:30/10:00)…Mt. Ollivier(1933m)
(10:30/10:35)…Muller Hut(11:02)…Sealy Tarns(12:10/12:25)…White Horse Hill(13:15)

 今朝はまたしても大雨、強風が吹き荒れて荒れ模様である。これでは山歩きは無理そうだが、とにかくMt.Cook Villageに向かい、DOCのVisitor Centerに入って様子を見る。非常に広いスペースには、NZの名だたるクライマーの紹介やMt.Cook初登頂に至る歴史、昔の登山装備や模型ジオラマ、NZ山岳関係の各種VTRなど展示が豊富で山岳博物館の様相。受付の横には、このエリアの山小屋に入っている人数をマグネットボードに示してあり、混雑度がわかるようになっている。この悪天候で、ほとんどの小屋は誰も入っていないようだが、Mt.Cook登頂のPlateu Hut(プラトー小屋)には10人ほど頑張ってチャンスを狙っているようだ。天気予報は明後日が良さそう、しかし翌日がフライトのため夜にはChristchurchまで移動する必要があり、その日の午前中に賭けるしかないのか?日本人のガイドさんが日本語でお客さんに展示の説明をしていたので、後で訊いてみるとThe Hermitage(ハーミテージ・ホテル)でトレッキングガイドの仕事をしていて、午前中に出かける予定が悪天候のためここで様子を見ているとのこと。英語の展示やパンフレット類などゆっくり見ていたら2時間過ぎてしまった、しかしもうっとじっくり見ても飽きない感じだ。
 クック村のもう一つの名物、The Hermitageへ行ってみる。元はAoraki(アオラキ)と呼ばれたこの地に最初にできた由緒ある観光ホテルで、英国人のヒラリー卿はトレーニングでこの地を良く訪れ、建物の前に記念の銅像が建っている。最近の改修後はますます近代化され、ど〜んとそびえる10階建て位のビルは、この山の中にどう見ても似合わない。1階ロビーはお土産や軽食類の店、隣に有料のSir Edmund Hillary Alpine Centerというアミューズメント施設(山岳博物館の一種?)ができ、奥には移転してきたAline Guides社のOfficeがあって若干の山道具も売っているが、登山ガイドというイメージからはかけ離れたショールームのように綺麗な所だ。山の中にここだけ都会を無理やり持ち込んだようで驚きである。ここに泊まる客の半分は日本人のツアー客だといい、忙しそうにうろうろするツアー客や添乗員の姿をよく見かけた。2階にはカフェテリア方式の広い食堂があり、まだランチタイム前で空いていて値段も意外に安いのでコーヒーとサンドイッチで早めのランチとした。
Hooker Glacierの吊橋、増水と強風で多難なトレッキングになった
 雨が小降りになってきたので、Mt.Cookを代表するトレッキングコース、Hooker Gracier(フッカー氷河)へ出かけることにした。Visitor Centerから歩いていくこともできるが、White Horse HillのDOCのキャンプ場前にある駐車場まで車で入ると行程を2km程短縮できる。このキャンプ場は管理人はおらず6NZ$を自分でポストに払う仕組みで、設備は簡素で閑散としていた。今日のような荒れ模様の日は強風でここでテント泊は厳しい。それでも貼り綱を木に縛るなどして頑張っている人も居た。小さな丘の上にAlipine Memorialという遭難者の冥福を祈るモニュメントがあり、先には濁流となった川を渡るつり橋が見える。代表コースだけあって歩いている人が多い。日本人に声をかけられ、少し先で道が冠水して通れないので、みんなそこで引き返してきていると言う。確かに吊り橋の先で道が川になっていてここで諦めて引き返している人が多いが、石を飛んで渡っている人、靴を脱いで渡渉している人もいて、対岸へ渡れば何とかなるようだ。私も飛び石でチャレンジすると、最後の着地で失敗して片方の靴を濡らしてしまったが、渡ることはできた。対岸の大地を適当に歩いていく。途中右側から川が流れ込んでいるのが増水の原因で、その先は再び道がはっきりしてきて水溜り程度で道の上を歩いていくことができた。
 山の上部は雲が激しい勢いで流れていて、ものすごい強風が吹き荒れているのだろう、時々稜線から激しい突風が吹きおろしてくる。Mt.Cook(3764m),Mt.Sefton(セフトン山)(3151m)に代表される稜線は見えないが、斜面に広がる氷河の迫力はなかなかのもので、こんな天気でもアルペン的なハイキングの雰囲気は存分に味わうことができた。増水箇所の先に足を踏み入れる人は少なく、単独・グループ合わせて数組程度に会っただけ。上部吊り橋の手前で右へ3日間コースのBall Pass Crossing(ボールパス越え)ルートが別れる。ここに標識は何も無い。一部の代表的トレッキングコースを除くと、標識が完備された明瞭な道など無いのがこの国の常識である。簡素な休憩所Stocking Stream Shelter(ストッキング・ストリーム・シェルター)で一休み。ここからSefton Biv(セフトンビヴィ)を経てThe Footstool(フットストゥール山)(2764m)へ登ったレポートが日本語サイトにあるが、小屋までの踏み跡もはっきりしない本格的登山である。
Mt.Cook Villageと一時姿を現したMt.Cook Low Peak(3593m)
草原状の道を風に煽られて進むとHooker Glacier末端にある氷河湖に到着。湖面に氷塊が浮かび、周辺の山肌とあいまった景観だがなにより風の迫力が凄い。ここで引き返すことにして、ザックをおろすとザックカバーが飛ばされて無くなっていることに気づく。帰り道気をつけて見ていくが、やはり遠くの見えないところまで飛んでいったようだ。Visitor Centerで会った日本人ガイドがお客と登ってくるのに会う。増水箇所は左岸側の丘の上を越えて歩いてくる人が増え、そちらへ行ってみると所々ヤブでわかりにくいが渡渉する必要はなかった。苦労した初日のトレッキングを終え、車でHoliday Parkへ戻る。道路脇に大型のリスに似た動物が多数車にひかれて死体が放置されている。Kiwiは残酷な人種かと思ったが、ボッサムというオーストラリア外来種で大量に繁殖してしまいNZの固有種の生態系を荒らすので、彼らにとっては害獣なのだ。草むらからいきなり飛び出してくるので100km近くで走ると避けようが無い。
 夜間も雨が降り続いた。下のホリデーパークにいる限りはテントでも心配無く過ごせる。翌朝は冷え込んで、周囲の山々は夜のうちに雪化粧していた。この付近の山の高さから言って、標高1000m以下でも積雪が見られ、Mt.Cookなどの山はかなりの積雪があったに違いない。Visitor Centerには標高の高い所で雪崩の危険有りとの注意書きが出されていた。Mueller Hut(ミューラー小屋)(1800m)とMt. Ollivier(オリビエ山)(1933m)のコースは今日は諦めることにする。
Sebastopol PeakからTasman Glacier周辺の山と氷河湖
山も見えないので最近できたEdmund Hillary Alpine Centerに入ってみることにする。26NZ$(約\1800)払うと今日1日の間自由に出入りできるシステムで、中央のドームシアターで時間毎に映画とプラネタリウムが上映される。中でもメガネを使用し、Mt.Cook登山や氷河スキーをリアルな3D映像で鑑賞するMt. Cook Magic 3D Movieは必見、他にもヒラリー卿のエベレスト登頂に関する展示やVTR上映など興味深く、悪天候で外を歩けないような時は1日潰しても飽きない所。
 外では晴れ間も見られるようになり、一時はMt.Cook山頂が姿を現した。ただし見えたのはここから双耳峰に見えるうちの手前Low Peak(3593m)のみだった。このまま明日にかけて天候良くなることを期待。午後から半日コースのRed Tarns(レッドターンズ)(1070m)を経てSebastopol Peak(セバストポール・ピーク)(1468m)へ登ることにした。Mt.Kitchener(キッチナー山)(2042m), Mt. Annette(アネット山)(2235m) などSealy Range(シアリー山脈)を見上げながら明瞭な道を登っていく。Tarnとは沼のことでRed Tarnsは広い湿原、赤い水草が多いためこう呼ばれるとか。Mt.Cook Villageが見下ろされ、前方には上部が岩場になった草原状の山が立ちはだかり気持ちの良い所。
Mt.Cook Villageから仰ぎ見るSebastopol Peak
ところがその先は目印が無くどの方向へ登ったらよいかわからない。もうここはTrampingのエリアでちゃんとした地図を準備すべき所だった。山渓のハイキング案内のよるとケルンを目指して登るとあり、左手の尾根上に人が居て、ケルンがあるようにも見えたので、そちらへ斜面を登っていってみる。踏み跡ではなかったようで足場の悪い所を落石に注意して尾根に出るが、ケルンは見まちがいだった。 丸い小ピーク上に出ると先ほど見た人に会う。彼は山頂を目指してるのではなくこの付近にもある湿原を見てまわっている様子。Sebastopol Peakは正面に聳えていて、まだ標高差かなりあり、岩場は少々手強そうに見える。取り付いてみると踏み跡があちこちに付いていて、登りやすそうなルートを選んで登る。上部は昨夜の積雪が残っているのでスリップに注意してヤセ尾根をたどるとケルンの有る山頂だ。これまで見えなかったCookのLow Peakがちょうど顔を出してくれ、NZ最長を誇るTasman Glacier(タスマン氷河)の周囲を囲む山々も風下のためか晴れ間が広がり、なかなか雄大な景観を堪能。ただ西海岸からの風が吹き付けるMt.Tasman(3498m)からMt.Ceftonに続く稜線はどうしても見えず、明日に託すことになった。
Mueller Hut付近の景観、小屋の背後がMt. Ollivier(1933m)
 登ってきたルートをはずれないように注意して下る。踏み跡は鞍部から沢筋の草原状の中に続いていて難なくRed Tarnsに下りつくことができた。結局山頂を目指す登山者には誰にも会わなかった。Villageから振り返ると登ってきたSebastopol Peakの岩峰が良く見える。山渓案内では手軽な印象であるが手ごたえある山だった。帰路はTasman Glacier方面の道路終点の展望台に寄っていく。駐車場から10分程歩くと展望台、雲が出てさきほど山頂から見た山々がだいぶ隠れてしまった。観光客が多く未舗装のためすごい埃で、道幅も狭くキャンピングカーなどとのすれ違いにも気を使う。車道途中から登るWakefield Trackの標識は無く、ここも登山道が無いTrampingコースのようだ。夕方キャンプ場から初めてMt.CookがHigh Peak(3764m)までその全貌を見せてくれた。天気が良くなったので家族連れでキャンプしている人たちが増えた。夕方は子供たち賑やかに駆け回っていたが、夜になると大人しく皆早めに寝てしまって静かだった。
 翌朝は期待に反して山に雲がかかっている。最後の日でありMt. Ollivierを目指し朝早く出発。天候は早くも下り坂、変化の周期が異様に早くて晴れ間は1日ともたない。過去の報告では数日間快晴が続くこともあったようなのだが。White Horse Hillに駐車してSealy Tarns(シアリーターンズ)(1300m)の湿原まで良いペースで来た。一面Mt.Cook Lily(マウントクック・リリー)の白い花が咲いている。キンポウゲの仲間ということだがLilyと呼ばれるにふさわしい大きく愛らしい花だ。他にGreat Mountain Daisy(グレートマウンテンデイジー)など。  
Mt. Ollivierでガスの晴れ間にHooker Glacier方面を望む
ジグザグの急登を続けるとガレ場の斜面でここからは残雪の上になる。上部は一昨日の新雪で一面雪化粧だ。小屋に泊まったと見られる山慣れない感じの若者グループが、雪の上を滑ってはしゃぎながら下りてきた。尾根に出ると岩の上をトラバースして、平坦な道が前方のMueller Hutに向けて続いている。ガスや雲の切れ目から展望はごく一部のみ。付近はMt.Cookをはじめ、日本語Webに登頂記が載っているMt.Sealy(2637m)、Sealy RangeとMueller Glacier周辺、そしてMt. Ceftonの荒々しい氷河の絶好の展望台のはずだったが。広い小屋のキッチンで休憩、若い日本人夫婦が居て今朝Cook村のYHAを出発してきたと言う。私より早い上手が居たとは。彼らはこの天気なのでMt. Ollivierはやめるという。私はまだ時間も早いので頂上へ行ってみる。小屋の先は道がはっきりしないTrampingのエリアで、1つ目のピークへ上がると少し先に山頂が見え、ヤセ尾根や段になった岩場を慎重に通過してケルンが目印の山頂に到着。風は山麓の方が強い感じだが雪が降ってきてしまい寒くて夏山とは思えない。粘っていると一時ガスが晴れてHookerなどの氷河湖と谷の向こう側の山々が見えた。Mt.Kitchenerの方からガイドとアンザイレンしたグループが戻ってきた。安全を規してこうする必要があるルートということだ。往路を戻る際は多数のハイカーや登山者が登ってきて人気があるコースである。ペース急いだので1時過ぎに駐車場に下山、これからChristchurch(クライストチャーチ)まで車で走っていくので今日は長い一日になる。

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