巨城セッラ山群 ピッツ・ボエー(3152m),ラガツォイから岩場のトンネルハイキング コルティナ・ダンペツォへ移動
年月日 2013年7月12日
天気 晴れ時々曇り
タイム Hotel Resort Al Sole(8:12)=ポルドイ峠(8:35/8:57)=[ロープウェイ]=サスポルドイ(9:03/9:15) …ピッツボエー(10:27/10:48)…Rif Boe付近…サスポルドイ(12:15/12:26)=[ロープウェイ]=ポルドイ峠(12:31/12:40) =ファルツァレーゴ峠(13:25/13:44)=[ロープウェイ]=Rif Lagazuoi駅…ピッコララガツォイ山頂(14:05/14:15) …Rif Lagazuoi(14:25/14:30)…トンネル…トンネル出口(15:20/15:30)…ファルツァレーゴ峠(16:10/16:17) =コルティナダンペツォ(16:40)=Hotel Villa Gaia(17:30)

ロープウェイの山上駅を降りると白く優雅なマルモラーダが望まれる
 コルティナダンペツォへの移動日であり、途中のポイントでハイキングを楽しみながら行く計画。見どころは沢山あるので、今朝も昨日のタイミングに合わせて朝一番に食堂へ、同じボーイさんが今朝も早いねという顔で迎えてくれた。まずはセッラ山群の最高点ピッツボエー(3152m)へ向けて、ポルドイ峠(2239m)へ車を走らせる。広い駐車スペースはまだガラガラで、ロープウェイの始発は9時だったので少し待つことになった。今日も良い天気、ロープウェイはわずか5分で、昨日マルモラーダから見た巨城のような山上台地の一端となるサスポルドイ(2950m)へと運んでくれる。氷河に包まれて白く優雅なマルモラーダが眼前に大きい。そして広大な台地に残っている雪の多さは驚き、点在する垂直の小さな断崖の部分を除くとほとんどが雪に埋もれている。これでは登山道もほとんど雪の上を行くことになり今日もスパッツを装着。緑が全く無く、岩と雪だけの山上城跡の世界が続いている。
 目指すピッツボエーは丸い大きな山容で眼前にでんと居座っている。途中の傾斜は緩く難なく頂上に立てそうに見えるのだが、駅からは一旦下って平坦な道をたどって行くので結構距離はある。雪に慣れていないハイカーが躊躇している横を抜けて下ったところにRif Forc la del Pordoi(2829m)の小屋が立っている。峠からロープウェイを使わずにここへ登ってくる道があるが、岩壁に挟まれたルンゼ状の急斜面で、おまけに今は雪の上とあって結構大変そうだ。平坦な雪原を横断し、途中で左に分かれて山頂へ向かう登りになる。直進するとRif Boe小屋を経て沢沿いにセッラ峠越えの街道に下ることができる。あるいはこの台地上を岩場を避けて縦断して一昨日訪れたガルディーナ峠に至る道もある。この台地の各コースをハイカーが通過している様子も見渡すことができて、結構ハイカーの往来が多い人気のエリアのようだ。山頂は大きな山小屋に占拠されて雰囲気が良くないので、少し雪の尾根を歩いた所で腰掛けて大休止、展望を楽しむ。最高の天気で周囲の山々を全て望むことができた。何といってもこれまで城壁の外から仰ぎ見てきた巨大な怪物を上から見おろすことができるのが一番の見どころだ。その周辺にサッソルンゴやチル山群などの岩峰が点々と取り巻いているが、ここからみるとその存在はちょっと小さくなってしまう。遠くにはオーストリア国境付近の山々が雲の合間に雪を抱いて連なっているのも眺められ、トファーナにチベッタに、と尖岩・奇岩で形成されたドロミテの山並みもはるかに続き、スケールの大きさに感嘆する。
丸い大きな山容のピッツボエーを目指す
セッラ山群の台地上は断崖部を除きほとんどが雪に埋もれていた

ラガツォイの山上駅からチンクエトーリ方面を望む
 下りは変化を持たせようと往路を戻らずに先に進んでみる。尾根から左に下るRif Boeの小屋方面へのトレースをたどった。サブコースのため急斜面であり雪が固い所もあるので慎重に進む。途中でヴィアフェラータのコースが別れこれは登り用なので、右側の一般コースを進む。こちらも途中沢を横切る所が凍結していて滑落に注意して通過。思いのほか手間取ったがRif Boe小屋のすぐ手前でメインコースに合流してひと安心。ピッツボエーの西側を巻いていく平坦な道を戻るが距離は長い。道理で私と同じ下りのルートをとる人は見かけなかったわけだ。最後の登り返しに一汗かいて、ロープウェイで車の所に戻る。さらに途中でハイキングを楽しむために直ぐに出発準備をしようとすると、男性が近づいてきて始め駐車料金の徴収かと思うが、エイズ撲滅の署名を集めているといって名前を記載したリストと寄付金の金額を書いた紙を見せられた。ヴェネチアでさんざんな目に遭ったことでこれはやばそうだと思い相手にしないでいると黙って去って行った。イタリアではこんな話には乗らないことだ。
 アッラバの町を通ってファルツアレーゴ峠(2109m)へ、ここも駐車料金は不要。13時を周りもう一つハイキングを行うために急いで準備をする。窓口で確認し、トンネルのハイキングはヘルメットとランプが必須、ヴィアフェラータも設置してあるので一応ハーネス一式も持参する。第1次大戦中にイタリア軍が山頂に陣取ったオーストリア軍を攻めるために岩場の中を山頂まで掘った長いトンネルがある。山上駅はRif Lagazuoi(2750m)の山小屋があり、展望台からこれまでと異なるコルティナ・ダンペツォのエリアの山々の姿を初めて目にする。ファルツァレーゴ峠の反対方向には、Croda Negra(2518m), Averau(2649m)と続く岩山の稜線、その左に小さくチンクエ・トッリの岩山群。チンクエトッリはここからは目立たないが奇岩が立ち並ぶ観光名所である。その先はPunta Lastoi de Formin(2657m)とPunta Giau(2414m)の特徴的な横長の岩壁、さらにCroda da Lago(2705m)から先はペルモ(3168m)へと峰々が続く。そして何といっても眼前にトファーナのピークが岩壁をあらわにして立ちはだかっている。手前からTofana di Rozes(3225m), Tofana di Mezzo(3244m), Tofana di Dentro(3238m)の3つのピークから成る。実はトファーナの最高峰へは反対側にあるロープウェイを使って容易に登れてしまうのだが、ここから見ると迫力があってとても簡単には登れそうに思えない。その先にはクリスタッロ、さらに遠くは有名なトレチーメ方面になるのだろう、沢山の岩山が林立しているのでどれがどの山かまでは識別はできない。
ピッコラ・ラガツォイからトファーナの岩峰を望む
 近くのピッコロ・ラガツォイまで15分ほど歩いて行ってみる。山頂には木製のキリストの十字架像があり花が添えられていた。ここもドロミテ特有のラガツォイの岩峰の突起がCima Fanes Sud(2980m)を筆頭にこれでもかと至る所で突出し、眼下は草原状の平坦な谷間が拡がる。ハイキングコースが草原から岩峰の間を巡っており、思い思いに歩くハイカーの姿が望める。峠へは一般のハイキングコースもあるが、岩場の長いトンネルを歩くコースに入る。他ではまず見られない珍しいものだ。階段からガレ場の上の尾根道を少し歩くと、木製の扉がありここから真っ暗なトンネル内の階段が下に続いている。鍵がついていて夕方には扉が閉められるようだ。装備を付けていざトンネルに侵入。階段を下るだけなので難しい所は無いが、暗い上に濡れて滑りやすいので、固定ワイヤーがある所はなるべくカラビナをかけていく。所々トンネルが枝状に分岐していて、かつて兵士の陣地となった洞窟の部屋や、外へ壁を突き抜いた窓につながっている。今は窓が灯り取りの役目を果たしているが当時は大砲などを設置して攻撃する目的もあったようだ。窓から外を覗くと正に絶壁のど真ん中でスリル満点の絶景だ。途中2組ほど登って来るグループに会った以外は歩いている人も見かけず、トンネルに挑戦する人はあまり多くないようだ。
 40分ほどかかってトンネルの出口につき、ようやく終わったと一息ついて休憩。ところがまだ終わりで無かった。此の先滑りやすい岩場の先に急な雪渓があり、先行者が立ち往生している。今日はピッケル・アイゼンは持参していないので通過できないと事であるが、ステップが切られロープも渡してあったので、何人か慎重に通過するのを待ってから、通過を渋っている2人の女性に断って先に行かせてもらった。雪が硬いので少々緊張するが、無事難所を突破し、この先短いトンネルを抜けるとやっと普通の道になり、ふりかえると岩壁にさきほど中から覗いた丸い窓穴がポツポツと空いているのが判る。通常コースに合流するとハイカーの他に、クライミングの帰りらしき登攀具を持ったクライマーの姿が見られた。のんびりハイキングのつもりが、今日も時々スリルを味わいながらの山歩きになった。車に戻り峠から下っていくと、ドロミテでは最も名が知られ冬季オリンピックが開催されたこともある、山間部に拡がるコルティナ・ダンペッツォの町が見えてくる。どこのイタリアの街もそうだが建物の色彩が調和のとれた美しさ見せている。
ヘッドランプの明かりでラガツォイの岩場トンネルの長い階段を下る
 市街地に近づき、Villa Gaiaという予約したホテルがすぐに見つかれば良いと思うが、そうはいかなかった。町の中心部に入ると車は一方通行で、象徴的な尖塔の教会のある広場の前を通り、近くの駐車場に入ろうとするが、狭くて満車状態。こっちに駐車場がありそうか、と勘で走っているうちに完全に迷子状態となった。離れたオリンピック競技場跡の付近に駐車スペースがあったので、ひとまず止めて近くの人に街の中心まで歩いて行ける聞いてみるが、英語が通じずラチが明かない。頭を冷やして再び車で中心部へ。一方通行路を一周する形で、教会の広場の反対側付近に広い駐車スペースを見つけ(バスセンターとファローリアのロープウェイの近く)、商店街のようなビルを抜けて階段を下りていくと案内所のある広場に出て、ようやく詳しい地図を入手し目的のホテルVilla Gaiaの場所を確認できた。街の南はずれの周囲が開けた眺めの良い場所で、中心部へ歩いて10分強。部屋が狭く施設も古い感じで朝食付2泊100Euro、これまで滞在したドロミテの2か所よりやや物価が高い感じ。でも宿の人は気さくでフレンドリーだったのは良かった。夕刻の目抜き通り、コルソイタリアは観光客で大変賑わっていて、日本人も比較的多く訪れるようで日本語メニュー有りというレストランも見かける。

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