ドロミテの女王 氷河に覆われたドロミテ最高峰 マルモラーダ(3343m)登頂
年月日 2013年7月11日
天気 晴れ時々曇り
タイム Hotel Resort Al Sole(8:00)=リフト乗り場(8:20/8:35)=[リフト]=Rif Pian Del Piacconi(8:48/9:02) …ヴィアフェラータ取付(10:33)…尾根ヴィアフェラータ終了(10:48/10:55)…Punta Penia山頂(11:18/12:04) …Rif Pian Del Piacconi(13:25/13:50)=[リフト]=リフト乗り場(14:06/14:17)=カナツェイ(14:35)

鳥かごリフトがマルモラーダ氷河へと運んでくれる
マルモラーダ氷河を登る、右手岩場の奥が最高峰Punta Penia

ヴィアフェラータにて下の氷河を見下ろす
 ホテルの朝食は7時半からでイタリアの朝は遅いので、朝早く山へ出かけるにはバイキングをあまりゆっくりと楽しめないのが難点。今日はハイライトのマルモラーダなので早く出発したいが、7時に食堂に行ってみると鍵がしまっていて、準備の人が来たら早速テーブルに座って催促したものの、コーヒーなど7時半にならないと駄目であった。直ぐに出発して、Lago De Fedaiaという人造湖付近にあるマルモラーダ氷河へのリフト乗り場へ向かう。右手にはVernel連山の岩山が聳えているがマルモラーダの優雅な姿はなかなか見えてこない。ダムを渡った先に駐車場があり、朝早いのでリフトに近い場所が空いていた。ここは料金無料であった。空は快晴、展望が期待できそうだ。ヴィアフェラータ装備に加えピッケル・アイゼン等雪山の装備を準備。ちょうど8時半にリフトが動き出し、朝一番にマルモラーダを目指す登山姿の人たちが乗り込んで行く所だった。
 まるで鳥カゴのような立ち乗りのリフトに乗り込むとモレーンの岩場の上から氷河の真っただ中へ10分ちょっとで運んでくれる。氷河から吹き下ろす風はとても冷たく上着を着込む。終点のRif Pian Del Piacconi(2626m)に到着すると、沢山の登山パーティーがアンザイレンをして準備している。私はザイルパートナー無しで氷河上のトレースに従って歩きだす。一面の銀世界の奥に岩峰が頭をのぞかせており、追いついた家族連れのパーティーにどれがマルモラーダかと聞くと、あれもこれもどれもマルモラーダだと言われる。最高峰Punta Penia(3343m)は右寄りの一番大きな岩壁の奥に見える。左側は2番目のピークPunta Rocca(3315m)であり、こちらは山頂直下までロープウェイが出来ているので容易に登れる。外国人なので不案内と見て、氷河にホール(クレバスのこと)があるので注意するように言われる。しかし雪が多いこともあるのかクレバスらしきものはトレース付近には全く見当たらず、特に不安は無かった。周囲を見渡してみるとザイルを結ばず単独で歩いている人もいるし、最高峰だけでなく氷河上の別のルートを楽しむ人や、Punta Roccaのロープ駅方面との間を自由に氷河トレッキングやスキーで楽しむ人も。
 前方に氷河上のトレースの上を最高峰Punta Peniaを目指すいくつかのパーティーが見え、先頭は氷河から岩場のフェラータに取り付いているのがわかる。彼らに続いて氷河歩行1時間半で岩場のヴィアフェラータに入る。固定ワイヤーの末端は雪の中に隠れており、少し急な斜面をトラバースして途中からカラビナを引っかける。ここまでピッケルがあれば十分でアイゼンを使用することは無かった。岩溝沿いのルートは初級程度で登り易くわずか15分で稜線に出て終了、ちょっとあっけなかった。後からスキーを担いで体格の良い男性が単独で登ってきたが、彼はフェラータの装備無しであった。山頂の十字架も近くに見えてきて、氷河の上にそそり立つマルモラーダの主稜線がPunta Roccaから続くのが見渡せる。ロープ駅からPunta Roccaまでは緩い傾斜の雪の上を歩いて行けるのだが、最高峰Punta Peniaとの間には岩場の深いキレットがあってその部分の通過は難しそうだ。
山頂へ向けて最後の雪の緩斜面を登る
山頂にある山小屋

山頂に立つ十字架にて
 あとは雪の上を歩いていくだけ、最初はヤセた尾根を注意して行くと広い緩斜面に出て、山頂の十字架を目指して20分ほどで山頂征服。標高差700mを2時間強と快調なペースで登り切ることができた。小広い山頂は休憩スペースが十分あって、先着のグループで賑わっている。雲が増えてきたものの周囲の雪渓を隔てて隣接するCime Ombretta(3011m)やGran Vernel(3210m)方面に林立する岩峰群は迫力満点。Lago De Fedaiaのダム湖の奥にセッラ山群の巨城とサッソルンゴの岩塊。他にも同定ができないが遠くトファーナーやクリスタッロあたりかと思われるこれから目指すコルティナ・ダンペッツォ方面の山々まで展望が拡がっている。すぐ隣のPunta Rocca山頂直下には大きなロープ山頂駅の建物が見え、山頂までの雪の上を人が歩いているのが見える。私の立つ最高峰との間の稜線はキレットの岩場で阻まれ、ロッククライミングの世界だと思われる。通過する人の姿は皆無、やはりこうでないと自分の足で歩いてきた甲斐がない。
 先ほどのスキー氏は登ってきた岩場の左側の雪の斜面を颯爽と滑って行った。ずっと雪の斜面が続いているのだろう。これだけ雪が豊富なので、隣のロープ駅はきっとスキーヤーも多いに違いない。登山者の食べこぼしを狙ってくちばしの黄色いカラスが直ぐ近くまで飛んできた。雪渓と岩壁を眼下に納めてこんな鳥でも誇らしげな姿に見える。頂上から数分雪の上を歩いた所に山頂小屋があるので行ってみる。小さな小屋であるが管理人が駐在し食事や宿泊もできるようだ。ちょっと断って中を見せてもらう。天気が悪い時に中で熱い飲み物をいただけるのはありがたいだろう。今日は外も温かいので立ち寄る登山者も少なく、小屋番のおじさんは手持ちぶさたで憮然としているので直ぐに引き返して下山にかかる。登りと全く同じルートで、岩場のフェラータを注意して通過すると、あとは雪の上なのでペースが速い。先行者は尻セードで下っているが、結構急な斜度の部分もあり氷河上でもあるので、確実にキックステップで下る。一時雲が多くなっていたが再び青空が広がり、前方のセッラ山群とサッソルンゴにも日差しが当たって、山頂で見たときよりさらに印象的な姿を見せてくれる。セッラ山群は何段もの城壁に囲まれた大きな要塞がどんと横たわるようでその存在感に改めて圧倒される。リフト駅が近づくと眼下には平坦な雪面が拡がるのみとなり、もう危険はなくなり最後に私も尻セードを楽しんだ。
 駅周辺は氷河を見に来る観光客で賑わいを見せている。今日は雨に降られることなく午後も良い天気だ。この時間であれば下まで歩いても良かったのであるが、往復のリフト券を買ってあったので下りも鳥かごに揺られて行く。下から子どもたちが次々に乗って上がって来て、皆手を振ったり叫んだりして大はしゃぎだ。ホテルに早く戻ってきたので部屋で一杯やってついうとうと寝てしまう。ちょっと寝過してスーパーが閉まる7時近くになったのであわてて買い出しに出かけた。明日はカネツェイを離れることになり、天気も良いので夕暮れ色の山を眺めながら町並みをぶらぶら散策。2泊ずつというのはちょっとあわただしい。夕食はピッツェリアでパスタ類とビール、料理には種類も豊富なパンやプリッツ類のバスケットを出してくれるのでこれでも結構な量で、さらに部屋へ帰ってからワインやつまみ類を嗜むというパターンになってきた。
雪渓と岩壁を眼下に納めて何を思っているのか
セッラ山群の巨城とサッソルンゴの岩塊を眺めながら氷河を下る

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