岩の回廊サッソルンゴ一周とサッソピアットヴィアフェラータ取付きまで
年月日 2013年7月9日
天気 晴れ時々曇り、午後雷雨
タイム Hotel Garni Eden(8:15)=セッラ峠(8:45/9:00)=[テレキャビン]=Forc La Del Sassolungo(9:15/9:33) …Rifugio Vicenza(10:20)…ヴィアフェラータ取付き(11:30/11:40)…Rifugio Vicenza(12:40) …Piz Ciaulonch(13:30/14:10)…Rifugio Emilio Comisi(15:00/15:10)…セッラ峠(15:55/16:03) =サンクリスティーナ(16:45/17:22)=Hotel Garni Eden(17:30)

セッラ峠からサスリガイス(3025m)を筆頭にガイスラー・プエズ山群を望む
 セルヴァの町の案内所で、町の地図やトレッキングに関する情報を見る。天気予報ではここ数日はにわか雨のマークがありその後は雨マークも無く良くなる傾向だ。隣に銀行があり、問題無く両替できレートも良い。Garni Edenという小さなホテルに2泊の予定、年配のお母さんが歓迎して迎えてくれたがドイツ語でベラベラしゃべるので何言っているかわからない。息子さんが戻ってくると英語も通じるので明日から山歩きをすることなど話した。今年は春に雪が多く降ったので昨年よりだいぶ残雪が多いそうだ。家族経営でとてもフレンドリー、料金も朝食付き2泊分で86Euro、都市部に比べるとぐんと安い。こじんまりした町ながらスーパーや登山用品店もあり滞在にも便利。ヴィアフェラータセット類も売っていたので、持参したハーネスに付けられる先端部(2本並列にカラビナをかけられ独特の緩衝機構が付いた用具)だけを買い求めた。特に慣れない国の都会でもまれてきた後だけに、こんなのどかな所は一遍で好きになってしまった。南チロル地方は大戦後イタリア領となるがドイツ系住民の抵抗により特別な自治権が認められ、ドイツ語・イタリア語とラディーニ語の3つが公用語だとか。国が違うと思う程の印象の違いはそういう背景もあるらしい。ここもある程度メジャーな町と言え、山間部にはもっと小さな隠れた素敵な町が沢山あるのだろう。
 昨夜は結構激しい雷雨に見舞われたが、朝は青空が広がった。朝食は生ハム,ソーセージ,卵料理,ヨーグルト,フルーツ,サラダ,シリアルに美味しいパン・コーヒーなど食べ放題で、これが美食の国イタリアの朝食だと認識、ついつい食べ過ぎてしまう。セッラ峠へ向けて広い草原のヘアピンカーブを登って行く。リフトのケーブルが多数架かっているが、全てスキー用で夏は動いていない。全面舗装とはいえ道幅はあまり広いとは言えず、すれ違いにも結構気を使いオートマ車で本当に助かった。
サッソルンゴの岩峰へ向けゴンドラで一気に上がる
後方にはガルディーナ渓谷北側のサスリガイス(3025m)・フルケータ(2924m)などガイスラー山群の鋭峰群が素晴らしく、Pizes De Puez(2907m)などのプエズ山群まで広く展望が広がる。前方には右手にサッソルンゴ(3181m)の岩が聳え立つのが見えてきた。Cinque Dita(2998m)、Sasso Levante(3114m)と合わせて3つの岩のピークが並ぶ。最高地点少し手前でテレキャビンが動いているのが見えた。セッラ峠の最高地点(2244m)まで行ってみるとレストランが数軒あり反対側に真っ白なマルモラーダの姿を初めて目にする。ドロミテを代表する山でありヴィアフェラータの準備をして登りたい山だ。早くも岩峰の山頂部に雲が湧いてきてサッソルンゴの山頂が隠れてしまった。テレキャビン乗り場(2100m)では駐車料金4Euroを徴収された。大人2人がやっと乗れる縦長の電話ボックスみたいなゴンドラで、係員が「タッタッタッタ」と言いながら乗り方をジェスチャーしてくれた。後ろから小走りに追いかけて手すりをつかんで飛び乗る。始めてなのでちょっとスリリングだ。前方のサッソルンゴとCinque Ditaの間のコルとなるForc La Del Sassolungo(2681m)まで一気に上がる。
 コルはRif Tony Demetzの山小屋があり両側に岩壁が迫って数組のクライマーが岩場に取りついている。ここはヴィアフェラータでは無くクライミングの世界だ。ハイキングコースは完全に雪の下に埋まっていて、多くのハイカーが歩いた跡に従って雪渓のコースを下って行く。はじめは少し急で前を歩く人が遅くて詰まったりするので時間がかかる。少し下ってくるとガスの晴れ間から無数の尖頂、針峰のピーク群が望めてなかなかの壮観だ。Rif Visenza(2253m)の小屋まで下ると、左に O.Schuster-steigというヴィアフェラータへ向かう道が分かれ、そちらへ寄り道する。サッソピアット東側のMittelGipfel(2958m)を乗越して反対のRif Sasso Piatto(2300m)へ下るコースだ。ゴロゴロした岩の間を進むと雪渓に出た所はカール地形、ガスも上がってきて周囲はぐるりと岩峰に圧迫されるように囲まれて別天地に来た感じ。他に登って来るハイカーも居なかったので、しばし静寂に包まれたこの雰囲気に浸っていた。
針のような尖頂に囲まれたカールの中を歩く
前方にヴィアフェラータに向かうグループが雪渓をトラバースしている。彼らのトレースのおかげで安心してヴィアフェラータのスタートとなる標高2600m位まで登って行くことができた。例の「鉄の道」のワイヤーが少し架かっているが、すぐにワイヤーは無くなり先は不明瞭なガレ場や岩場の道が続くようだ。見上げると垂直に近い岩場が稜線に付きあげ、コースの日本語レポートは見たこと無いので様子がわからず、ここを超えてRif Sasso Piattoからサッソルンゴへ一周する道を歩くのは時間的にもきついし、逆方向にFriedrich-August Wegを出発点へ戻るのもちょっとつまらない。少し様子を見たところで戻ることにする。
 下から家族連れのパーティーが装備を付けて上がってきた。先頭のお母さんが一番登山に慣れている様子、自分は引き返すが先は難しいのか聞くと、「そんなに難しく無いと思う、行きたいのか」と言われたけれども無理はしないことにする。雪渓の下までは他のハイカーが数人上がってきていた。Rif Visenzaに戻り、2時間以上の結構長い寄り道となった。山小屋での食事を楽しむ人も多くてテラス席は満席、どんなものを食べているか覗いてみると大体パスタ類かケーキだ。朝あれだけ食べれば私は行動食で十分だ。ハイカーで賑わうハイキングコースとなる。しばらく下って行くと、後方には小屋を中心にさきほどまで接近していた岩の回廊を離れた位置から見ることになり、鋸歯状のゴッツイ岩峰群の拡がりが見渡せる。ここだけでも日本の岩場に比べてスケールの大きさが感じられる。トレールの分岐点で右に曲がってサッソルンゴを時計回りに一周するコースに入る。岩壁の縁に沿ったお花畑の中を歩くコース、人気あるらしくハイカーで賑わっている。
 Ciaulonch-Sattel(2118m) まで登りの道となり、コースを外れ近くのPiz Ciaulonch(2124m)という草原のピークまで行って周辺を眺める。西側にはアルペデシウジ(シウジ高原)のゆるやかな緑の起伏が広がりこれまでの岩の世界とは対照的な景観だ。高原の奥には右端のサントナー(2413m)の突起からCima De Terrarossa(2655m)に続くシリアル連山、その奥にカティナッチョとかローゼンガルテンと呼ばれている岩山を雲の合間から見ることができた。目の前にはサッソルンゴの岩の塊が鎮座し、やっと雲が取れて怪獣のように聳える山頂までの全貌を望むことができた。ハイカーはここまで来ないので一人で山頂を占拠していると、若いイタリアの男性が一人登ってきたので少し話す。彼もここは素晴らしいコースだと感激していた。彼はテレキャビンに載らないで大きくFriedrich-August Wegから一周するコースを来て、後は一番近いセウラ山のリフト駅へ下るそうだ。私はセッラ峠の車に戻るのでまだ先が結構ある。午後は天気が悪くなりそうなので気をつけてと言われる。
草原の小ピークからサッソルンゴ(左)とサッソピアット(右)を見上げる
 重い腰を上げてトラバースの道を下って行く。次第に放牧のカウベルの音が響き渡るアルプスらしいのどかなハイキング道に入って行く。案の定、途中から雷鳴とともに雨が降ってきたので雨具を装着。Emilio Comisi小屋付近からは自動車道路に並行する形で、牧場の車道が交錯するハイキングコースをセッラ峠へゆるく登って行く。雨具も持たないで途中の木陰で雨宿りしているハイカーも見かけた。セッラ峠に近づくと、朝は雲が湧いて全貌が見えなかったサッソルンゴの3つの岩峰が、今は雨模様なのにかえって全体の形が見えている。天気が悪くてもにわか雨程度なので、それなりに視界が得られて山も楽しめるようだ。セルヴァより下流側のもう少し大きな町Sクリスティーナへ車で行き、様子を眺めスーパーでビール・ワインにつまみ・行動食など買い出しをしてからセルヴァのホテルへ戻る。今日のディナーは主人お勧めのピッツェリア LA BULAへ行ってみた。評判が良いのかテーブル席は予約で一杯とのこと、バルのカウンターに座って牛肉料理とハウスワインを注文。スーパーでも見かけた大きな丸い団子が3つも添えてあり、いもを摺って固めたようなあっさりした食感でなかなかいける。後で調べると南チロル地方の郷土料理カネデルリというパンとジャガイモから作るクネーデル(団子)のようだ。

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