2.四姑娘山を裏側から望む中国の上高地 長坪溝トレッキング
年月日 2017年7月18日
天気 晴れ時々曇り、にわか雨
タイム 戸肆山荘(8:15)…連絡バス乗場(8:20/8:25)=長坪溝入口(8:30/8:40) …虫虫脚瀑布(9:20/9:25)…枯村淮(10:00)…木騾子(12:00/12:55)…下千海子(14:00) …枯村淮(15:05/15:10)…ラマ寺院(16:05/16:15)…長坪溝入口(16:20/16:35) =連絡バス乗場(16:45/16:55)…戸肆山荘(17:10)

枯村淮は正に上高地を思わせる景観
 朝から青空が広がって、メインストリートの奥に大姑娘山が朝日を浴びている。このエリアは南から北へ遡る3つの谷が主なトレッキングコースで、大姑娘山~四姑娘山の稜線の東側が海子溝で西側が長坪溝、さらに5000m級の峰々を隔てて西側が双橋溝だ。今日は真ん中の長坪溝のハイキングでガイドは不要なので私1人で向かう。もともとは途中で1泊して2日間たっぷり楽しみながら高所順応をするスペシャルな予定を組んでいたが、フライトキャンセルで1日減ってしまったので日帰りに変更。訪れる人のほとんどは日帰りであろうが。宿の朝食は定番のおかゆに辛い漬物と味噌のブロック、それに米粉のパンと茹で卵が出てきて、ちょっと味気ない感じ。昼の行動食と紅茶ティーバックを日本から持参しており、ポットに紅茶を入れて出発。歩いて5分ほどの景区入口までAlexが案内してくれ、川沿いの広い敷地に管理棟などが建ち並んでいる。本日の入場料は90元。シャトルバスで10分程上がった3400m付近がスタート地点。ここに長坪溝と書かれた巨大なコンクリートの門があり、自然の景観とは何とも不釣合いに感じる。昨日の双橋溝入口も同じであり、この国の人は巨大なシンボルが好きなのだ。
 露店を横目に正面には少し雲がかかった四姑娘山が見える。道端にはホーストレッキングや荷物運搬用の馬がずらり並んでいる。車道をわずか登った台地に立派な建物のラマ寺院があり自由に中に入れる。見学は帰りにすることにして、ここから木道の歩道に入る。平行して馬道が設けられているが、道の状態が悪いせいなのか人間は歩道を歩くよう指示がある。森の中を沢へ向けての下りではじまり、観光気分のグループが大勢雑談しながら歩いているので邪魔、なかなか自分の思うようなペースで歩けない。道端はテガタチドリ、シオガマグクの類の花がピンク色に咲き誇っている。左へ虫虫脚瀑布という滝への歩道が分岐していたので、ちょっと見に行くつもりで行って見ると、急な階段が続きなかなかきつい。まだ高度への適応は十分ではないようだ。登りついた展望台からは少し離れているものの落差30mほどの水量の多い滝が望める。ここまで上ってくる人は少なくて、おじさんが1人ほうきで床の落ち葉を掃除をしていた。村人の雇用対策なのか、このような人をとてもよく見かけ、明らかに人数が過剰すぎると思う。
 露店やトイレなどの設備もある歩道が続く。背の高いトウヒなどの樹木や潅木の緑に囲まれた木道が続き青空がすがすがしい。正面に四姑娘山が覗くのだが、山頂部は雲に覆われている。明るい谷間は一面のお花畑、種類はとても多く日本の高山でも見られる黄色のキンバイソウ、キンポウゲ、紫のフウロソウ、白のイチリンソウ、セリ科のシシウド、アズマギク(シオン)などがいたるところに咲きまくっている。花の大きさが日本のよりひと回り大きいように感じる。行けども行けどもお花畑が尽きないところがすばらしい。珍しい花もあって、青い細長い花が多数かたまりになって咲いているもの(サクラソウの仲間プリムラ)、鮮やかなブルーのリンドウのような小花が地面にびっしりコケのように生えているもの(ゲンティアナ)など。<注:花の名前は詳しくないので他のホームページから引用させていただいた。>
木螺子から望む四姑娘山の裏側も急峻な雪渓と岩場
枯村淮という所は、川幅が拡がって枯れ木が立ち並ぶ中洲のある池。上高地の梓川と穂高を連想させる光景だ。先に進むと喜絨脚瀑布という標識があり、遠目に先ほどの滝より幅が細く落差のある滝が見られる。頂を隠していた雲も減ってきて山の眺めが良くなってきた。左手に鋭く尖ったピークはプニュー山(神山)(5413m)だ。
 橋を川の対岸へ渡ったところが木道の終点で馬道とも合流する。先の道は結構ぬかるんでいて水溜りを避けたり端の高くなったところを歩いたりして、決して歩きやすいとはいえない。さきほどまであふれていた中国の人はめっきり減って、欧米人のハイカーを見かけるぐらいで落ちついて歩けるようになった。作業所のある民家が一軒あって売店も兼ねている所が下干海子。この先は標識がほとんど見当たらないのでどこまで来たかわからず、ペースを上げてゆるい登りを続けると、馬を駐留する場所に土手があり、これを超えると突然ヤクが放たれた広い草原が現れた。右手に古びた木造の小屋があり、標識もあってここが木騾子 Mulozi(3700m)だ。ここまで片道12km歩いたことになる。
 四姑娘山をこれまでと違う角度から望むことになり、その姿はかなり異なって見えるが、こちらからの屏風のような絶壁と雪渓も見ごたえがある。広い草原は黄色と白の花の絨毯になっていてゆっくりくつろげる別天地。人もちらほら訪れる程度で静かだ。上流側に羊満台山(5666m)を主峰とした氷河地形の山が一部見えている。先へ進むとさらに多くの峰々が見られるのであろうが、残念ながら日帰りではここが限界で引き返すことになる。馬に乗ったホーストレッキングの1団だけが先へ向かっていった。うらやましいけれど高所順応にはならない。泊まる予定だった小屋は思っていたより貧弱な小さなものであるが、簡単な食事は出してくれるようだ。広い草原内を一周りしていると山裾に三角屋根の大きな木造の建物を発見。ここにも泊まれるのかと思いきや、柵で囲まれ中には入れず建物は荒廃状態、これも地震の後遺症だろうか。
木螺子は広い草原のお花畑でヤクがのんびりたむろしている
ずっとお花畑の中を歩く。青い花の塊りはサクラソウの仲間プリムラ

 1時間ゆっくりして同じコースを戻る。午後になる時々馬の往来があって、その際は蹴飛ばされないように道端に避ける。右岸方向には、日月宝鏡山(5609m)や五色山(5430m)がそびえているはずだが、そこまでは視界が及ばず見えているのは前衛の山だろう。午後2時を過ぎると一時雷雨となったものの、昨日と同じく30分ぐらいで止んだ。枯村淮あたりまで来るとだいぶ人が多くなってきた。「チマー(馬)」と盛んに声をかけられる。自分は順応のためにも最後まで花を愛でながら歩いていく。最後は台地まで上り坂をふんばってラマ寺院に立ち寄る。とても立派なもので地域の人に伝統的なチベット文化が根付いることを覗わされる。観光客以外の村人達もたくさん集ってきて会話を交わしている様子が見られ、彼らにとって大切な場所になっていることが覗える。
 日隆の山荘が並ぶ街を散策しながら宿に戻る。玄関前で鳥の丸焼きを披露していたり、焼肉の食堂もみかける。昨日は量が多すぎたので1皿にしてもらい、焼肉はできないかときいてみたが、基本は肉と野菜を炒めたものになってしまうようで、昨日と材料を変えた青椒肉絲が出てきた。往復24kmの高度順応ハイクを元気に行ってこれたので、今日はビールを許してもらう。宿には準備がなく、Alexと一緒にすぐ隣の小さな店に買いに行く。おいてあるのは「雪花純生」という銘柄の500ml瓶だけで10元。20元札しか無かったので、おつりが無いから2本買ってといわれるとAlexが払ってくれ、今回は彼の払いになった。ガイド料として700USD以上払っているからまあいいか。ビールの味は日本の約半分の値段相応で薄くてコクがあまりない。でも辛い中華料理にはビールが一番よく合う。宿の食堂は、家族やグループで食事をして雑談やトランプゲームに興じる中国人で賑わっていて、街道を車で旅行中に1泊する宿泊客なども多いようだ。お客もAlexも酒を飲む習慣はないみたいで、この山奥で中国の人々の健康的な食生活を垣間見た感じ。明日からは山の上に2泊して大姑娘山と二峰を登頂する計画で、まだ3800m程度しか到達していないので結構きつい行程になりそうだ。

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