1.出発のフライトトラブル~四姑娘山山麓、迫力の岩峰を望む双橋溝
年月日 2017年7月15~17日
天気 晴れ時々曇り、にわか雨
タイム 羽田空港(8:40)→CA184→北京首都国際空港(11:55//18:50)→CA4110→成都双流国際空港(22:15/23:10) =近くのホテル(23:20//6:25)=成都双流国際空港(6:35)=[Taxi]=新南門バスターミナル(6:58/8:00) =[Bus]=日隆(13:20)…戸肆山荘(13:30/14:05)=双橋溝入口ゲート(14:15/14:35) =紅杉林(15:20/15:50)=大草坪(16:00/16:20)=隆珠措(16:35/16:40)=盆景灘(16:55/17:00) =双橋溝入口(17:30/17:50)=戸肆山荘(18:00)

 北京経由で成都へのAir Chinaのフライトで旅行の最初からトラブルに見舞われた。まず羽田空港を離陸前に30分ぐらい駐機場で待機して離陸がだいぶ遅れ、理由のはっきりした説明は無いままやっと離陸できて一安心。窓側席だったので新宿~高尾山~富士山~甲府~南アルプスと中央線と同じルート飛んでいくのを上空から眺められた。飛行機の高度だと線路や道路などは肉眼では識別できないものだ。その後は雲が出てきてほとんど見えなくなった。北京での乗り継ぎ時間が1時間になってしまい急いだが、入国審査や荷物の受け取りにも時間がかかり、国内線ターミナルではほぼ出発時刻になってしまう。この時間だと荷物を預けられず大型リュックを機内に持ち込むように言われて、そのSecurity Checkでも何かと引っかかって、トレッキングポール2本は危険物とされ持込は絶対駄目といわれて没収されてしまった。
 やっと中に入ると予定の便はDelayedと表示されていて、乗り遅れる心配はないことに一安心、焦って損した。しかしそれだけでは済まなかった。いつまで待っても遅れ表示のままで何時に出発できるのかわからない。理由がFlight Frequency Controlと書かれていて何のことかわからない。後でわかったことだが、これは軍が演習の為に航空機の飛来数を制限しているのだそうで、こんな事は中国ならではか。搭乗口では乗客がすごい剣幕で係員に文句を言っている。両替のため一旦ゲートの外に出て、再びめんどうな検査を通って戻ってきた。空港のレートは少し悪いと言うが、この時は1人民元=約17円、これで飲み物など買い物はできるようになった。夕方になってペットボトルの水とお弁当が配られたが、夜になるとついに欠航とのアナウンス。再びゲートの外に出て案内所に教えてもらった所に行くと、そこは発券カウンターで長蛇の列。結局、空席があるのは明日の午後7時の便になるがそれで良いか?と言われ、他にどうしようもないのでその便を予約してもらい、明日再度搭乗手続きが必要とのこと。航空会社としては天候不良などで欠航になったのと同じ扱いのようだ。丸一日以上棒に振るという事態だが、四姑娘山は1日遅らせて明後日の朝には成都を出発できることになる。出発便の表示を見ると国内線の半分近くの便が赤く欠航と表示され、多くの人が出発できなかったと見られる。付近は若者グループなどがたくさんたむろしていたり、座席や床で寝転んだりで、多くの人がここで夜明かしする様子。こんな事態にも慣れているという雰囲気も感じられる。シュラフも持っていることだし自分も空港内に居ることにした。今夜の成都の宿は、日本のbooking.comからも電話があり事情を話すと、宿に連絡してキャンセル料なしにしてくれたので助かった。成都の登山ツアーを申し込んだ会社へは電話が繋がらず、Free WiFiもうまくいかなかったが、総合案内所でパスワードをもらうと夜になって使う人が減ったこともありスマホのWi-Fiが繋がるようになりWeChatでやっと連絡できた。自分だけの個人ガイドだったので1日遅らせることは問題ないとの返事をもらえた。中国のネット情報統制の影響か、Facebookなどはほとんど使えず、当局公認?のWeChatが一般的なのだそうだ。
 翌早朝から多くの乗客で空港内は混雑している。また昨日の状況が繰り返されるのではという不安があったが、今日は各便とも順調に飛んでいるようだ。午後7時という遅い便からもう少し早い便に変えられないか確認してみるも空きは無いと言われる。以前故宮など訪れたことがあり、猛暑と大気汚染の北京市内まで出かけていく気にもならず、レストランで長時間ねばったり座れる場所やWiFiがつながりやすい場所を探して広い空港内をうろつく程度でひたすら退屈な時を過ごした。夜の便でやっと成都に到着したのは11時近く、外は雨。今日も空港で寝ようかと思ったが、ターミナルがあまり大きくなくてどうかと迷ってうろうろしていると、おばさんにホテル18元でどうかと声をかけられたので、この状況でこれ幸いとOKし、車で10分ぐらい走った所の古びたホテルに案内された。英語がほとんど通じず、明日7時半に成都のバスターミナルに行く必要があるのでタクシーを呼んでほしいと伝えたくて、女の子がスマホの翻訳ソフトを持ち出してきて何とか要件は伝わったようだ。WiFIが使えたのでこの夜に四姑娘山についての連絡ができたので、これでやっと目的に復帰できるメドが立った。こんなフライト運休となる事態は特に北京で多いらしく、北京で国内線への乗り継ぎは値段が安かったのだが要注意だ。他の国ではネットでも話題になりそうだが、中国だと情報統制でほとんど伝わってこないのか、自分としては想定外で最初からとんだ洗礼を浴びさせられた。
 翌朝は時間通りフロントに運転手がきていたが、空港まで行ってそこで自分でタクシーを拾えということだった。次々と出発の人を乗せてくるので拾うのは簡単で、ガイドブックで行先の「新南門汽车站」を示せばOK、メーター料金で52元と安い。バスターミナルは建物の中で、1階がバス乗車口に小さな売店、2階は切符売場と待合室。待ち合わせのガイドAlexとすんなり会えると思ったら、彼は建物の外で待っていたようで、だいぶ待ってからショートメールメッセージで確認してやっと落ち合えた。切符は準備してくれていて一緒に路線バスに乗り込む。空調はついているが、座席が指定され席はちょっと狭くて乗り心地はいま一つか。Alex氏は30歳ぐらいでちょび髭と刈り上げ頭の割と無口な青年で英語を流暢に話す。成都に住んでいてツアー会社のTravel Managerという肩書で、四姑娘山をはじめとして周辺の登山ガイドの経験も豊富のようだ。6月にも大姑娘山に行っていてそのときは雨、でもこのところ天候は良好とのこと。欠航トラブルで成都市内は全く見れていないのでどんな所か聞くと、小さな町だと言う。地元の人にとっては見るべきところは多くないのかも。
 渋滞の市街を抜けて茶店子バスターミナルで大勢乗客が乗ってきた。いきなり若い女性が大声を出して騒ぎ出し他の乗客ともめだした。座席の番号が重複していて仲間と一緒に乗れなくなったらしく、10分以上ももめたあげくやっと次のバスに乗るよう説得されて文句言いながら降りていった。Alexにはもともと英語を話さない現地登山ガイドのみで良いと行っていたのが、都合がついたからとAlexがずっと私と同行してくれることになったという経緯で、こんなことがあると言葉のわからない私1人では不安になってしまうから、Alexが同行してくれて助かった。高速道路に入って都江堰・青城山付近を通過し、一般道に出て山あいの小さな村をいくつも通過していく。ドライブインで休憩、こういう場所のトイレは1元を払う。漢方薬のような多くのグロテスクな植物が大量に売られている。もともと医食同源の国だから食べ物と薬の区別が無いことを感じる。カーブが多い登り坂が続き約3700mで新しい巴朗山トンネルで峠を越える。周囲に雪を抱いた山の展望も楽しめ4000~5000m級であるが四姑娘山とは異なる。かつて通行止めが頻発した難所が、完全舗装の良い道路にすっかり改修された様子。
探勝バス終点の紅杉林は阿妣山(5694m)、玉兎峰(5578m)の岩峰に囲まれたカールのような地形
 トンネルを抜けて高度を下げ、道が急カーブした所で2度目の休憩。ここで初めて雲の間から覗く真っ白な四姑娘山の姿を目にした。群を抜いて高く鋭く聳える姿には圧倒される。露店で食材めいたものを売っているが、どうみてもゲテモノである。ここからわずかで日隆(Rilong)に着いてバスを降りる。路線バスは小金というもっと先の町が終点、バス停などの目印も無く1人だったら乗り過ごしてしまいそうだ。高度は3150mもあるが日が照っているので暖かい。宿へは少し坂を登っていくと、高度に慣れているAlexはさっさと登っていきついていけない。きれいな装飾に飾られた石造りの山荘風(チベット風)の建物が並ぶメインストリートで、この中の戸肆山荘に泊まる。Alex行きつけで宿の人とはなじみのようだ。通りの両側は地震から復興した新しい建物が並ぶが、少し離れると壊れたままの建物も目立つ。午後は私1人で、バスが通じている双橋溝へ行きたいとお願いしていて、チャーハンなど軽い昼食を出してくれた後、宿の人が車で10分程の景区入口へ送ってくれた。自然保護区の各エリアごとにゲートで入場料を徴収され、ここは料金150元だ。探勝バスに乗りこみ10分ほど待って人が集まったところで出発。
 谷沿いの車道は約35kmもあって、マイクロや大型などいろんなバスがピストン輸送している。断崖の渓谷から次第に周囲が開けた谷になり、左右に山々が望めるようになる。ただし行く手は黒々とした雲に覆われ残念ながら雨模様か。それでも雲の中に幻想的に岩山が浮かび上がりなかなかの光景だ。いっとき激しい雷雨に見舞われたが、すぐにやんで終点の紅杉林(3800m)に着く頃には晴れ間が出てきてラッキーだった。露店がずらり並んで、覗いてみると飲み物や軽食のほかに自家製のドライフルーツや怪しげな木の根やきのこ類など、よくわからない食べ物が並んでいる。客引きの勢いがすごく長居すると無理に買わされそうなので退散。谷奥に向かって左手に阿妣山(5694m)、右手に玉兎峰(5578m)があり、カールのような地形に幾筋もの滝が流れる。森の中に遊歩道があり、途中開けた場所はお花畑で、聳え立つ岩壁の山を見上げたり、谷の下流側も山々の眺めも良い。
 復路のバスからは、青空にそそり立つ牛心山(4942m)の岩壁が目に飛び込んでくる。岩山の景観が素晴らしくシャッターチャンスの連続だ。野人峰(5592m)、女王峰(5404m)、布达拉山(5442m)など連なっているはずだが特定はできない。途中の見所でバスはしばらく停車、各自好きなだけ時間を過ごしてどのバスでも乗り降り自由なのだ。大草坪は広い草原で、仏塔から円錐状に張られたロープに色とりどりのタルチョがはためき、チベット文化の影響が感じられる。谷の下流側のピークの中では山頂が鋭く尖ったその名も尖子山(5472m)が目を引く。谷沿いのお花畑の中や展望台への歩道もあり、村人たちの営む民宿があり、エキスパートの登山基地にもなるらしい。時間があれば車道を離れてハイキングを楽しみたいところだが、明日以降車が入らない谷のフラワーハイキングに期待。このあと2つの湖、これまで見た残雪の山々を湖面に映す隆珠措と、湖の中に趣のある枝ぶりの枯れ木が並ぶ盆景灘を見て入口に戻った。バスで駆け足の見学であったが、長く続く谷間はアルプス的な景観で満たされた素晴らしい所であった。
 ショートメールを送って宿の車が迎えに来てくれるてはずだったが、他のグループは迎えのバスで去り1人待っていると、たむろしている連中からタクシー?と声がかかりっぱなし。やがてやって来た車のドライバーが「乗れ乗れ」と身振りで示すので、宿の車と思って乗ってしまった。実は全然ちがった悪質な行為で、目的地を教えなければならず到着時に30元も請求された。何かと旅行者に声をかけ、隙につけ入る手口が横行していそうなので注意が必要だ。夕食は宿で作ってくれるというのでお願いする。特別に2品(青椒肉絲と回鍋肉)とご飯が出てきた。高所対策でアルコール類はお預けである。四川省だから相当辛いのを覚悟して口にすると、家庭料理風で辛さはさほどでもなく、ただちょっと味が濃くて塩分が多すぎると思う。量も多くて全部は食べ切れなかった。まあ日本でおなじみの中華料理なので無難な食べ物だといえる。Alexと同じ部屋に泊まったが、彼はパソコンに向かいっぱなしでずっと旅行会社の仕事をしていた様子。

車窓から聳え立つ牛心山(4942m)の岩壁を見上げる
チベット寺院のタルチョがはためく広い草原の大草坪で休憩、どこもアルプス的景観に満ちている

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