2.プロスキー・トルバチク(3140m)登頂、さらに花と火山の大地をひた歩く
年月日 2019年7月7~10日
天気 前半は曇り時々晴、後半は雨
タイム キャンプ Kleshnya "Chela"(6:00)…溶岩洞窟(7:20/7:40)…荷物デポ(10:20/10:40)…プロスキートルバチク[外輪山の一角](13:15/13:50) …荷物デポ地点(15:23/15:58)…キャンプ地(19:20//10:00)…ランチ(11:55/12:20)…トルバチク・パス …やぐらのピーク(19:16/19:24)…クレータの上でキャンプ(20:00//9:00)…小屋(9:45/10:03)…ランチ Edelweiss Meadow付近(13:20/14:30) …Studyonaya river canyon(15:15/16:00)…キャンプ Baraniy Creek(16:58//11:00)…キャンプ Kopito "Hoof" mountain(14:25//)

 暗いうちに起き出して、定番のロシア風ライスの朝食をたいらげる。甘酸っぱいミルクのような味で、日本人にとっては奇妙な味で非常に抵抗感がある。でも唯一のエネルギー源だから慣れるしかない。重荷を背負っての第一歩を開始。雲が多めながら明るくなった空にウディナ(2921m)とその奥の峰々のシルエットが浮かび上がるが、目指すトルバチクの頂上部は相変わらず雲の中。オフロード車が通れる幅広い道をたどると、右下に昨日見つけられなかった溶岩洞窟を発見。ここまでは車で観光に上がってくることもあるようだ。この先は不毛の台地を火山灰を踏みしめてか細い踏み跡を登る。途中でテントを出して荷物をデポし身軽になった。サブザックを持ってこなかったので、ザックに防寒具など荷物が多くなったが、中には水だけで登る人も。
プロスキートルバチクの噴火口を囲むクレーターの全景を望む
最近の降雪で完全な雪景色だが、積雪は数センチ程度と少ない。ゆるい斜度が延々続き若い人のペースが速くてついていけない。最後の急斜面でだいぶバテた。プロスキートルバチクの外輪山に登りつくと、思いのほか青空も覗いて噴火口を囲むクレーターの全景が望め、標高差約1800mを登り切った後のなかなか感動的な光景。トルバチク本峰方面(3682m)も時折雲間から顔を出す。ハイペースで上がったので私は不調であったが、他のメンバーは元気でなかなかの精鋭部隊だ。最高点まではまだ150mくらい残していて、時間があれば外輪山一周して最高点へ上がるのは難しくなさそう。ただこの先トレースは無く通常トレッキングはここまでのようで、我々も先が長いこともありここで引き返す。
 デポ地点まで下ってくると私の体は楽になり高度の影響もあったようだ。重荷を背負ってトラバチクの右側斜面をトラバースして高度を下げ、沢をいくつも渡渉して踏み跡もない所をGPSで確認しながら進む。正面のウディナ、右手に雄大な雪山の連なりや、足元のお花畑が疲れた体を癒してくれる。このあたりのウルップソウはピンク色をしている。キンバイソウ、イチゲ、イワウメ、等々日本の高山に似た花が見られる。休憩時によく見ると野生のロバがじっとこちらを注視していた。距離はかなり離れた所に大きいヒグマが出現、爆竹や笛などで音を鳴らしても立ち去らずおっかなびっくり進む。
雄大な雪山の連なりやお花畑が癒してくれる
ウディナ(2921m)を望む大自然の中でキャンプ

標高1100mくらいまで下って沢の水を得られる場所でようやくキャンプ。最後の下りはかなりゆっくりのペースに助けられ、行動時間13時間、悠に20kmを超える長い行程を終えた。高度が下がると再び蚊の大群が襲来、食事の際は雪山用の上下に防虫ネットで完全武装、暑さを我慢すればこのスタイルは効果的だった。夕暮れ時には空が晴れ渡り、持参した少量のウイスキーを嗜みながら周囲の山々を眺める。
 翌朝はトルバチクとウディナがくっきり晴れ渡りこれまでで最高の眺めだった。昨日より行程が短いのでゆっくり10時に出発。若干左方向へトルバチク・パス(1503m)に向けて進路を変えて行くと、正面にはジミナ(3081m)が右に小岩峰を従えて聳えている。
トルバチク(3682m)のゆったりした山容
右に小岩峰を従えたジミナ(3081m)

広大な大地をゆるく登っていくと手付かずのお花畑が広がっている。これまでの花以外にツガザクラ、ミネズオウ、そして登るにつれシャクナゲが多くなった。だいぶ雲が増えてきたが、一瞬の晴れ間に行く手に急峻なカーメニ(4575m)と噴煙を上げるクリチェフスカヤ(4750m)が現れた。クリチェフスカヤは地熱と降灰のため積雪は全く無い。ランチはパンとチーズ・サラミにナッツ類、量が少なめで若い人は食べた気がしないという表情。皆個人で多少行動食を持参していて御相伴にあずかることもあるが、それも全然足りずもっと買い込んでくるべきであった。その後は2つの4000m級火山は雲の中に消えてしまった。沢を超すためのルート取りに迷い気味で、大きく迂回したりして工程がはかどらない。さらに天候が悪化してきてしまい、ガスの中をさまよい歩くことに。峠より高い所を歩き、一旦下ってやぐらの立つピークに登りつく。晴れていればクリチェフスカヤ火山群を一望する絶好の展望台なのだろうが、裾野の小さな火山クレーターが見られるだけで極めて残念。ピークから下ると眼下に広い平坦なクレータが広がり、目的のキャンプ地がどこかわからず、近くに沢が流れているのでこの辺でテントを張る。雨も降ってきて寒い一夜となったが、蚊の大群から解放されたのが救い。
ウルップソウはピンク色のものが多い
登るにつれシャクナゲが多くなってきた

 次の日も朝から弱い雨が降るあいにくの天候となった。クレータの平坦地を横断する踏み跡がみつかりその先に小さな小屋があり雨宿りできた。ここが探していたキャンプ地のようだ。もともとの計画ではさらに高度を上げていくことになっていたのに、この悪天候では何も見えず、期待は裏切られてどんどん高度を下げていくことになった。ツンドラの大地をひた歩いていき、途中で付近の見どころ2か所を巡る。角材の形の岩が積み重なったStack of Woodと呼ばれる奇妙な形の山、そして黒い岩が廊下状に削られた峡谷で今は水の流れは無く雪渓のブリッジが残っている。やがて多数のテントがあるBaraniy Creekのキャンプ地に到着。ここまで誰にも会わなかったのに思いのほか人が来ているのに驚く。クリチェフスカヤ火山群探勝のベース地になっているようだ。人が多いということは再び蚊の大群の中で過ごすことに。渓谷の周辺でハイマツなどの枯木を集めることができ、あずまやで焚火をおこして炊事に利用できる。不毛の火山とツンドラをひた歩いて来た身にはホッとする場所とも言えそう。天気が良くなればこのベースから再び高度を上げたいところだが、翌日も濃い霧で全くダメ。もう何もすることはなく、車が上がってくる Kopito "Hoof" mountainまで下ってしまうことに。小さな小屋の前に英語で併記があるコースの案内板があって参考になるが、かなり大雑把なものである。オーストリアから来た元気の良い2人組の若者がいて、我々の若いメンバーは偶然の出会いに夜までアルコールなしで盛り上がっていた。迎えの車は次の日の午後のはずが結局来なくて、悪天候で山もよく見えず、ここで2泊も蚊の大群の中でぼーっと過ごした翌朝ようやく同じ六駆車がやってきた。
やぐらのピークからカーメニ(4575m)・クリチェフスカヤ(4750m)、手前に噴煙を上げるベジミャンヌイ(2882m)、左にウシコフスキー(3943m)
ガイドが8月にドローンで撮影
左からジミナ(3081m)・ウディナ(2921m)・トルバチク(3682m)
ガイドが8月にドローンで撮影

続きを見る
ロシア  カムチャツカ半島グレートハイキングツアーのメニューに戻る
トップページに戻る