1.六輪駆動車でクリチェフスカヤ火山群を目指す、トルバチク火山で近年の噴火の痕跡を巡る
年月日 2019年7月3~6日
天気 曇りか霧、のち晴れ、にわか雨
タイム 成田空港(13:50)→SU5481→ウラジオストク国際空港(17:00//2:10)→SU5616→ペトロパブロフスク・エリゾボ空港 (7:25/9:10)=(タクシー)=ペトロパブロフスクホテル(9:30/10:30)…ロシア正教会…アバチャホテル…レーニン広場(12:40/13:40) …ベーリング記念碑など(14:10)=(路線バス)…ホテル(14:45//8:15)=ミリコボ[昼食](14:10/15:20)=カムチャツカ川の橋(18:20/18:40) =洪水跡[休憩](19:20/19:35)=キャンプ Kleshnya "Chela"(23:30//10:20)=Dead Forest道路終点(11:10/11:45)=途中で下車(12:15/12:20) …小火山の山頂(13:00/13:30)…ストーンサークルの広場(13:50/14:15)…キャンプ(16:25/16:50)…溶岩流の跡…キャンプ(18:10)

 昼過ぎの成田空港は驚くほど閑散としていた。ガラ空きのオーロラ航空コードシェア便でウラジオストックへ向かい、深夜出発の乗り継ぎ便まで空港で過ごすのはもう慣れっこだ。両替所でルーブルをゲットし、テーブル席で生ビールにロシア風餃子・フライドポテトを注文。ところが荷物を置いて近くのコンビニへ行き日本のに似たおにぎりを買ってきた間に、まだ半分近く残っていた食事を全部片付けられてしまった。もともと量が多いせいか、食べものが沢山残っていてもすぐ片付けたがるのがこの国の習慣らしい。トイレに行く時など今後要注意だ。日本より3時間時計が進んでいるカムチャッカへは朝の到着となり、着陸前に雪が残る山々を眺めることができたが、空港に降り立つと寒々とした霧につつまれていた。ガイド氏の出迎えを受け、1時間後にオーストリア人メンバーの1人がソウルから到着するのを待って、タクシーでホテルへ。今年は例年より気温が低く、雪が多く残っていて氷河上の歩行が危険だとかで予定のコースを一部変更するとか気がかりなことを言う。標高の高いところへ行けなかったらツアーの魅力が減滅してしまうかもしれない。
 夕方6時のミーティングまで時間があり、中心部へ向けて街歩きへ出かけた。メインの大通りは交通量が多く路線バスも頻繁に行き来している。初めての身には、両側の飾り気のない建物群は、入口が寒冷地のためか閉鎖的でロシア文字の看板も読めないので中が何なのかわからず入りずらい。低い雲が重々しく立ち込めた天候で街全体が暗い雰囲気だ。途中ミシェンナヤ丘の裾野にやたら目立つロシア正教会があり立寄ると、建物内部だけは別世界のようにきらびやかだった。市の中心部へは坂を下り、戦車のモニュメントがある古いアバチャホテルからクルトゥチノエ湖に沿って歩いていくが、結構距離があり周りは殺風景で散歩には向かない所だ。やっと街の中心といわれるレーニン広場、だだっ広くていくつか記念碑がぽつんと点在するだけ。中心部と言うにはとても寂しさが漂っているがこれがロシアらしい姿なのか。端のほうにこじんまりと数件の店があり、レストラン風の店内に入ると英語が通じず勝手がわからないのでやめて、コーヒーショップで店員が何とか英語を話してくれたので、サンドイッチとカフェラテを買う。店内に飲食スペースは無く、広場のベンチでランチタイム。昼過ぎになってようやく陽が射してきて、アバチャ湾の向こうにビリュチンスキー火山(2173m)がどんと現れ、ミシェンナヤ丘の右側にアバチャ山方面の火山が山頂部を覗かせていて、いずれも積雪で真っ白だ。こうなると観光客の散策する姿も目立ちはじめカムチャツカに来た実感がわいてくる。中心部と言われるこの付近は、歴史地区としてカムチャツカを航海した探検家などの記念碑が点在する観光エリア。しかし広場の裏手に工事現場のような簡易トイレしかなく施設は何ともお粗末だ。
移動中の車窓から雪を抱いた山が延々続くのが望める
 2時間も歩いてきたので、帰りはバスの系統番号の見当もつき、路線バスに乗り込んでホテルの近くまで無事戻ってきた。バス料金はとても安くて市民の足となっていて、途中多くの乗客の乗り降りで混雑する。ペトロパブロフスクホテルの方に伸びた大通りは、市民生活の中心になっていてマーケット等が立ち並び買い物に便利なエリアだ。夕方のミーティングでメンバーの顔合わせと食料・テントの荷物分担をする。20kgは軽く超えそうだ。オーストリアの3人組と私以外は、それなりにロシアに馴染みがあって会話もできる。英語での会話はあまりスムーズにできず資料も無いので、トレッキングの詳しい計画はつかめず私としては皆についていくしかない。その後若手のメンバーと夕食へご一緒させていただく。マーケット方面に歩いていくと洋風のおしゃれなレストランもあり、明日からのハードな山歩きの成功を願って乾杯。午後10時過ぎまで明るいので、夜更かして朝はゆっくりの生活リズムのようだ。
 翌日はトルバチクの登山口まで500km以上の長距離を、ロシア軍払下げのような厳つい六輪駆動車で移動する。もともとの計画では麓まで乗合バスで行くことになっていたが、バスは無いのでずっとこれで移動となり、車のチャーター代がだいぶ高くついたらしい。天候はとても変わりやすく、朝は濃い霧に覆われていたが、内陸へ進むにつれ青空が広がり、車窓には1000mクラスの名もない山々が雪を抱いて北アルプスのような迫力ある景観が広がり、これが延々続くのだから自然のスケールの大きさに圧倒される。車は時々エンジンが過熱し、そのたびしばらく止まって冷やしているし、スピードもあまり出ないので時間がかかる。中間のミリコボの町で、外見が倉庫のような食堂に入ると、カフェテリア方式でボルシチや焼き飯など好きな料理を選べて悪くない。山へ入る前の最後の腹ごしらえだ。街中はカラフルな集合住宅が目立ち、側面に描かれた壁画が面白い。
六輪駆動車でオフロードを進み洪水跡のような所で休憩
カーメニ(4575m)とうっすらクリチェフスカヤ(4750m)の噴煙を確認

 広いカムチャツカ川を渡る橋からの眺めを楽しんだあとは、いよいよ林の中のオフロードに入る。道の荒れようは半端でなく激しく揺さぶられながら超スローで進む。途中洪水の跡だろうか、道が途切れて幅広の土砂で埋まった所を横断。眺めが開けたのでここで休憩、遠目にカーメニ(4575m)とその横にうっすら最高峰クリチェフスカヤ(4750m)の噴煙を確認、これは幸先が良いのか?蚊の襲来がはじまり防虫ネットと虫よけスプレーの出番、車内に入った蚊は全部叩き落とす。相変わらずの悪路が続き、途中普通のRV車が脱輪して立ち往生していたりしてなかなか着かない。林を抜け出ると樹木が消滅して荒涼とした月の砂漠のような所を登っていく。午後10時を過ぎて暗くなってきてもまだ走り続け、11時半にやっと木造の小屋が建つ標高1100mのキャンプ地に到着。テントを建てていると早速蚊の大群が襲来。寒冷地でも耐えられる特大サイズの蚊である。簡単に殺せるのだが、数が半端ではない。特にヘッドランプの明かりに集まってくるようで、テント内にも蚊がびっしり止まっていて全て殺しにかかる。簡単な行動食を口にしてやっと眠りにつく。
 次の日はテントを張ったままで火山地帯の観光と足慣らしのハイキングとなった。朝食は五穀米のような麦っぽいごはん・ビスケット・インスタントコーヒーなど、腹がへっているのでまずくても何でも食べるしかない。キャンプ付近はマーモットがたくさん生息し、残飯を狙っているのか巣穴から出てうろついている。近くにはごつい岩肌に雪をまとったウディナ(2921m)が、カムチャツカ火山らしい円錐形の山容を見せてくれる。10時過ぎになってようやく六輪駆動車の準備ができて、何故か別の観光客と同乗して、1975年の噴火で溶岩と灰に埋もれてしまったという広大な大地をゆるく下っていく。末端部は立ち枯れた木が残っているDead Forestという観光ポイントで、若い樹木の芽生えも見られる。
立ち枯れた木が残るDead Forestとウディナ火山(2921m)
多数見られる噴火跡の小さな山の1つに登る

山の上部は一部雲がかかっているが、青空が広がり良い天気。一帯は噴火跡と思われる砂の山が多数見られ、帰りは途中で車を降りてストーンサークルがある広場から40分ほどかけて1つの頂に登り、周囲の荒涼とした景観を眺めた。ガイドはドローンを飛ばしている、重装備に加えそんなものを持ってきているのだ。明日登るトルバチクの山頂部は雲に覆われているが、本峰(3682m)とプロスキー峰=小トルバチク(3140m)があり、一般的なツアーで登るのは後者だ。だだっ広い緩やかな山という印象。キャンプまで歩いて戻る途中、砂れきに所々力強く咲いている高山の花々や遠方の雪を抱く緩やかな1000~2000mクラスの山脈が目を楽しませてくれた。一時にわか雨に見舞われ、天候が不安定なことを思い知らされる。
木が全くない砂漠地帯に咲くキンポウゲのような花
5年前の新しい溶岩流の上を歩きまわる

キャンプに戻ると今度は近くにある5年前の噴火でできた新しい溶岩流を見に行く。複雑な縞模様やチューブ状に固まった溶岩の上を歩き回り、ハワイのキラウエアを思い出す。溶岩洞窟があるというので皆で探したが見つからなかった。ここまで同行してハイキングツアーの計画はあまりきちんとしたものではなく、半分は同好会的な集まりで優柔不断なものだと分かった。値段も通常のツアー会社と比べて半分以下なのだからそういうものなのだろう。

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