エルブルース(5642m)スキー登山2
トレーニング編 チェゲット山 スキー

年月日 1998年4月25日(土)
天気 快晴(朝のうち曇り)
タイム Cheget Hotel(10:10)−(リフト)−リフト上/レストハウス(10:40)…露岩の尾根へ(13:25/13:45)
Cheget山頂上(14:10/14:35)…滑降終了(15:35/15:50)…Cheget Hotel(16:50)

 朝方しだいに雲が晴れて、部屋の窓からは近くのItkolbashi山辺りに続く草地の斜面に昨夜降った 新雪が積もっているのが眺められた。ホテル周辺のコメツガのような針葉樹林がすがすがしい。 朝食前に外へ出てみると、眼前に雲の中から真っ白の岩山が姿を現してきた。 NakraとDonguz-Orunという2つのピークで、あそこまではスキーで行けそう、頂上まで稜線は 歩いて行けそうかな、などと目で追う。今日はこのあと2つの山を終始眺めての行動となった。 ホテルから反対方向を見ると、すっかり晴れ渡りエルブルース前衛から本峰の一部も見えた。 外に出るとホテルの大きな飼い犬が人なつっこく寄ってきてじゃれあう。 食堂では猫がテーブルの下に潜り込んでおこぼれを待っている。
 リフトが動き出すのはのんびりしたロシアタイムの10時。2本のリフトのうち1人乗りリフト まで階段を上がって、スキーを手に持って荷物をお腹側に背負ってリフトに乗る。2750mのレストハウス 所までのんびりと上がっていくと、ようやく銀世界となる。今の時期は、リフトのお客はスキーをするより 観光で来る人の方が多いようだ。今朝ホテルの前から眺めたNakraとDonguz-Orun、反対方向には Elbrusがせり上がってくる。この上に1本リフトがあり、さらに上にチェアバーリフトがあって、 スキーシーズンには3100m位まで行けるようだが、今はこれらのリフトは動いていない。 日本でこれだけの雪があればいくらでも人は来るだろうに。
 まだ人気の無いハウス前で、既にシールを張ってあるスキーを履いてアレキサンドラと共に出発。ゲレンデをトラバース 気味に登っていく。体慣らし初日ということでゆっくりのペースだが、やはり高度や時差の影響で 今一つ元気ない。特にYさんは遅れてしんどそうだ。アレキサンドルが今日の新雪の Snow ConditionはBestだという。

チェゲット山(3404m)
ゲレンデ上部のチェアバーリフトの向こうに頂上を望む。
Donguz-Orun(4468m)とNakra(4451m)
中央のDonguz-Orun頂上の真下から 7の字型の氷河が形成されている。
 NakraとDonguz-Orunが凄い迫力、急斜面にNorth Donguz-Orun Glacerがちょうど”7”の字形に 形成されている。時折昨夜の新雪が雪崩となって爆音とともに落ち、全く人を寄せ付けない世界だ。 アレキサンドルはこの6月に氷河が安定したらDonguz-Orun頂上からあの"7Glacer"をスキーで滑る 予定だという。上部ではロープで確保しながら滑る(?)そうだが、あそこを滑るなんて凄いエクストリ ームスキーヤーなんだと判る。 頂上までは簡単に登れるのか訊くと、グレード4B(定かではない)だとか、裏からの方が易しいとか 言う。フレンチグレードなのか訊いてもよくわからなかったので、日本で言えば何級のクライミングに 当たるのかは不明。
チェゲット山頂上にて 後方はMaly Dongusorun

 ゲレンデから尾根の反対側に回り込んでトラバース気味に進み、途中からチェゲット山頂上へ向けて 急な登りに入る。アレキサンドルは急斜面をものともせずキックターンを繰り返していくが、 我々は時々シールに新雪がまとわり付く為にスキー後ずさりが起こるのを気にしたり、キックターン に体力を使ったりでバテてきた。こんなだったらスキーアイゼンを持ってくるべきだった。岩が所々 顔を出した尾根に出たところ(約3300m)で大休止。頂上まであと一息だが、Y,I両氏はここで 待つという。下りは別ルートなので、途中でガイドが合図して合流することにして、私とアレキサンドルで頂上へ。
 彼はこの先の広い斜面をシール直登でどんどん行く。私は途中でスキーの後ずさりがいやでスキーを斜めに して、それ以降は斜登行とキックターンでガイドよりだいぶ遅れて頂上に着いた。Conglatuation! と迎えられる。反対側はいままでのスキーエリアと異なり急な雪壁となっていて、雪稜が Maly Dongusorunへ向けて続いている。11番小屋からElbrusへのルートが一望のもと。結構急そう、 今日よりももっと急だよと言われて、Elbrusをシール登行で登る自信をなくし、ツボ足で行こうかな と思う。
 いよいよお待ちかねの滑降だ。頂上から、来た時と反対側に少しトラバースしていくと、 眼下に大斜面が広がっている。ガイドが先にジャンプターンで下って行き、私も思いきって飛び込む。 雪はとても滑りやすく、新雪ターンがおもしろいように決まる。こんな素晴らしい斜面を独占 して滑れるなんて最高の気分だ。アレキサンドルに追いつくと、 Excelent! と言われ、あまりスキーで誉められたことはないのでとても嬉しかった。彼の 滑りを良く見てると、体力にものを言わせた豪快なジャンプターンを繰り返しては時々転んで止まっている。 エキストリームスキーヤーは必ずしも山スキーの天才ではないらしい。
 IさんとYさんは、リフトの方へトラバースして戻ろうとしている。ガイドに言われて 2人を呼び寄せる。Yさんは例によって軽技の滑りでやってきた。Yさんの伝言で、Iさんは 調子悪いのでリフトへ戻りたがっているとのことだが、ガイドはリフトへ戻るのが必ずしも安全とは 言えず、一緒に行動したいのでやはりここまで来て欲しいと言うので、呼びかけてゆっくり下りてきて もらった。Iさんはつらそうだったが、しぶしぶ急斜面と一部雪が切れている所を、斜滑降でゆっくり 下りてきた。 休み休み下って所々雪が切れて地面が出ている所を横切ったりして、ついに雪が続かなくなった所で スキーを脱ぐ。時々雪を踏み抜いて足を取られながら、牧場の斜面のような所(結構急だが)を下って 林道に出て、脱スキー後の歩行1時間でホテル前にたどり着いた。
 飲み物をおごってくれるというので、私はビールを、他の2人はジュースとスプライトを 頼むと、ホテルのバーから仕入れてきてくれた。飲みながら明日の予定を話す。予定を変更し、 早立ちしてもう少し長いスキーツアーへ行くという。今日の我々の様子から、標高を上げずに体慣らし した方が良いと思ったみたいだ。ガイドが帰って部屋へ戻り、Iさんはすぐ寝て休んでしまったので、 Yさんが泊まっている1人部屋の方に移って、2人でウオッカと山崎を飲んだ。Iさん抜きで 夕食へ行った後、3人で少し飲んでから早めに休んだ。
エルブルースを望む 双耳峰の左側がヨーロッパ大陸最高峰の西峰5642m
チェゲット山頂からのシュプール ガイドと私の2本のシュプールが見えるはず


 続きを見る 

エルブルースのメニューに戻る
世界の山旅のメニューに戻る
トップメニューに戻る