奥深く神秘的な山々と湖 世界遺産のボイ渓谷
年月日 2010年7月25〜26日
天気 晴れ
タイム Val d'Aran Camp Forcanada(9:05)=Viehla(9:15)=Boi Information(10:05) =Presa de Cavallers(10:30/10:43)(1780m)…橋が消失戻る(11:50)…Refugi Ventosa i Calvell(12:50/13:05)(2215m) …Presa de Cavallers(14:38/14:44)=Boi Village(15:02/15:20)=Taull付近(15:28/15:45) =Erill La Vall(15:52/16:10)=LLeida(18:00)=Barcelona(20:00)=ホテルを探して迷う =Ostal Lami(23:00//6:50)=Barcelona空港(7:20/9:50)→BA489→ London Heathrow(11:20/13:55)→BA005→成田空港(9:15)

コース前半からVall de Boi(ボイ渓谷)を振り返る
 山歩きができるのも最終日となり、これまで順調に進んだこともあって当初計画していなかったAiguestortes(アイグェストルテス)国立公園の西側Vall de Boi(ボイの谷)に立ち寄ってからバルセロナに戻ることにする。資料を貸してくれたY氏の一押しの場所ということもある。昨夜飛び込みで入ったVal de Aran(アランの谷)の一角のキャンプ場を出発したのは、予定をほぼ消化して気持ちがのんびりしていたこともあり、事務所が開く朝9時になってしまった。早く出ようと思えば裏口から車で出られたようだが。立派な舗装道路を快適に走る。曇り空で周辺に高い山が見えないこともありあまりパットしない所だ。なのにキャンプ場が次から次へやたら多い。避暑目的なのか、それにしても訪れる人はそんなに多くないのでどこも閑散としている。フラワートレッキングも可能なようだが、主に冬のスキーリゾートとして賑わうのだろう。一帯の中心となるViela(ビエラ)の街でガソリン補給、税金の関係なのか値段はやはり圧倒的にフランスより安い。街を抜けると長いビエラトンネルを通過、3車線になった近代的な立派なトンネルなので面食らう。工事がだいぶ遅れて開通したのは最近だとか。
鋭いピークのAgulles de Travessani(2659m)が前方に現われる
 最初にBenesque(ベネスケ)へ向かったN-260の分岐点に来て、国境を越えた大きなループを一周し終えたことになる。まもなくVall de Boiの入口があり左に折れる。周囲の山はそんなに高くなく平凡な感じ、最初の印象は世界遺産というわりにはつまらない所だと思った。昨日の大岩壁の印象が強烈すぎたせいもあるか。上空は雲が流れていて山のほうは晴れているようだ。どこを歩くか決めてなかったので、まっすぐ奥へ進むと左にしゃれた建物がある。Caldes de Boi(カルデス・デ・ボイ)というSpa(温泉)マークのあるホテル、そういえばピレネーではSpaの施設はあまり見かけず今回その恩恵には与れていない。先には小さな小屋の案内所におじさんが1人いた。フランス人っぽい夫婦の先客が、地図も持たずにフラリと訪れた風で、粘ってあれこれ聞いているのでだいぶ待たされた。やっと終わってお勧めウォークコースを伺うと、先のダム下の駐車場まで車で入れ、最初の小屋まで往復4時間だという。地図でみるより時間がかかる感じ。最後に「ナマステ!」と言われたのでこの人ネパールに関係しているのか、そういえば日本人のWeb報告にも小屋のネパール人のことが書かれてあり、この山域は彼らの好みに合っているのかも。何日も山に入るトレッカーにとっては貴重な情報が得られる所だろう。未舗装の細い林道を行き、駐車場は満杯だったので手前の道路路肩に車を止める。何だかんだで出発が10時40分になってしまい、今日中にバルセロナへ戻るのにはあわただしくなってしまい、朝ゆっくりしたことが悔やまれる。
Ventosa i Calvell(ベントーサ小屋)付近からEstany Negre(ネグレ湖)とMassis de Besiberri(ベスベリ山塊))(3029m)方面の岩峰
 はじめは大きなEmbassament de Cavallers(ダム湖)沿いの単調な道。湖畔は北から山越えの風が強く日陰では寒いくらいだ。湖の先、沢沿いに草原上の道が続き、振り返るとde Cavallersが青色に光り、Boiの谷が見下ろせる。周辺には雪を抱く高い岩山がようやく見えてきた。ところが先でトレールが途絶えてしまう。ちょうど後からテントをかついだ若者集団がやってきて付近をうろうろするが道は無い。ここにあった橋が流されてしまったのが原因らしく、下流に戻った所に仮の足場が設けられて対岸に渡れるようになっていた。だいぶ時間をロスしてしまい少々あせってくる。何も標識が無いのでみんなここで迷っている。
 登りが急になってくると岩場が出てきてルートが不明瞭な所もある。ケルンなどに導かれて登りきると、周囲にはこれまで一部を見上げるのみだった3000mクラスの岩山が次々に大きく姿を見せてなかなか感動ものだ。前方にはAgulles de Travessani(トラヴェサニ針峰群)(2659m)という複数の尖ったが目を引き、右はPic de Comalespada(2833m)、後方はMassis de Besiberri(ベスベリ山塊)(3029m)。奥に歩いていくと美しい光景が次々と展開するなかなか魅力的な場所だ。目標のRefugi Ventosa i Calvell(ベントーサ小屋)(2215m)に到着。この付近からのEstany Negre(ネグレ湖?)と周辺の山の眺めは素晴らしい。花の種類も豊富な中で、特に大型のリンドウのような紺色やハクサンボウフウに似た白の花などが目立つ。地図を見るとAiguestortes(アイグェストルテス)の山域は反対側の観光拠点のEspot(エスポット)村へ抜けるまで奥深く広大で、上部にも神秘的な湖と山々が多数点在しているようだ。道はあまり良く整備されていないこともあって人も少なく奥深い静かな山を何日もかけて歩くのはまた格別だと思う。
Taullの教会(世界遺産の教会群の1つ)
 駐車地点まで戻り、ふもとに点在する村にある世界遺産の教会群を3箇所ほど見てまわった。素朴な村は訪れる人も少なくて、付近で遊ぶ子供たちの声だけがひっそりした村に響いていた。最も大きなBoiの村は、狭い石段の両側にひしめく古い石垣の建物を歩いて廻るのも楽しい。トレッキングと合わせてこそ、Vall de Boiの魅力の真髄が理解できるんだと思う。ついに時間切れ、来たときと同じ経路で帰路についた。LLeidaから順調に高速道路に入り、途中Cafeとガス補給のため休息する余裕もあった(レンタカーはガソリンを空にして返却する方式だったので最後は少しずつ補給)。通行料は無料なので専用の施設なく一旦沿道の町に下りて近くの店に入ってUターンして高速に入る仕組み。Monterasatt(モンテラサット)の丘の目の前を通過する際は、岩山が夕陽を浴びて大変美しい光景、止まる場所がなく写真が撮れないのが惜しい。
 Barcelona(バルセロナ)で最後の試練が待っていた。中心部より空港寄りの経済的ホテルをネット予約していたのだが、アクセス地図を印刷してくるのを忘れてしまったのだ。高速の出口が全くわからず住所から見当をつけて降りて周辺を走り回るも全くわからない。最悪は空港のロビーで夜を明かすしかないが、ホテル代を払っているのでできるだけ努力して探すことにする。看板が目立つ別のホテルを見つけたのでフロントにホテル名と住所を見せて調べてもらった。かなり離れているので高速に一旦入るが、首都高に初めて入った初心者ドライバーの如く、言われた出口がわからず再び迷子になってしまう。ガソリンが無くなりそうなのでスタンドでまた少し補給し、ついでに道順を聞くが英語があまり通じず、市の中心部と空港の間をさらに往復する羽目に。やっと先ほど案内してもらった出口を捉えることができ、夜も遅くなり市街地内でうまく見つかるかと不安だったが、目的のホテルの看板を発見した時は感激だった。結局3時間も迷って着いたのは夜11時近かった。近くの公園にBARがまだ開いていて肉料理と生ジョッキにありつけてやっとひと息つく。翌朝早く空港へ向かう。レンタカーの返却方式もユニークなもので、書面に駐車した場所の番号を書いて例の会社名が書かれたワゴン車の窓が少し開けてあって、そこから書面を投げ入れるのだ。来客用の営業所を持たないことで値段を安くしているということ。ワゴン車近くのスペースを探すのにも手間取り、昨夜のトラブルで荷物整理もできておらず、空港のカウンターでも行列ができていて、空港でゆっくり朝食を取れるとの目論みは外れ、お土産を買うのもままならず機内に乗り込む。結局荷物のトラブルとか言って出発まで30分も機内で待たされた。乗り継ぎのHeathrow(ヒースロー)空港も混雑していて巨大なエリアのターミナル間移動が不便で、「格安」だから諦めがつくというものの、今回の航空会社は好きになれなかった。最後はどたばたしてしまったが、今後のためにも少しでも低コストで海外へ自由旅行するためにはこのような苦労も厭わない覚悟が必要。

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