雲天のヨーロッパ・パノラマ道〜スデーテンドイツヒュッテ〜雨のグローサームンタニッツ登頂(3232m)
年月日 2013年7月24〜25日
天気 24日 曇り 25日 曇り時々雨、のち晴れ間
タイム Lucknerhaus(7:55)…Grei Buhel(8:41/8:52)…Kals Berg…Telstation Seilbahn(10:40/10:50) 〜Cimaross(11:10)…Kals-Matreier Torl(11:35)…Kalser Hohe(12:10/12:23)…Hohes Tor(13:15/13:25) …Durrenfeld(14:35/14:45)…Sudetendeutsche Hutte(15:20//7:40)…Kline Muntanitz(9:22/9:27) …Groser Muntanitz(9:50/10:05)…Kline Muntanitz(10:30)…Sudetendeutsche Hutte(11:30/11:55) …Au Berc Steiper Alm(13:08/13:13)…車道に出る(14:00)…Matrei in Osttirol(15:10) …Matrei Bus Terminal(15:20/17:12)=[PostBus]=Lienz Bahnhof(17:40)…Gasthof Falken(17:55)

カルス村からゴンドラに乗って稜線へ一気に上がる
 まずルックナーハウスの裏側から、昨日と反対方向に登っていくコースに入って、カルス村へ尾根伝いに歩くハイキングを楽しむ。広い草原状の道となり眺望が広がり雄大な気分にさせてくれる。稜線に登りついたグレイビュヘル(2247m)より、フィガーホルン(2744m)の山頂へ行くコースが分岐するが、登りに1時間以上かかるので割愛してカルス村へ向けて下りに入る。これから向かおうとしている前方のグラナートシュピッツ山群を眺めながらの道は、良く整備され途中ベンチが多数設けられているので、つい腰をおろして休憩してしまう。人の姿は全く見当たらないが、日中はカルス村に滞在している人の良いハイキングコースになるのであろう。樹林帯をぐんぐん下って車道に出ると、所々民家が建ちカルス村に近づいたと思う頃、前方のローテンコーゲルに雲がかかって山頂が隠れてしまった。朝から雲が多めだったが、グロースグロックナーも見えていてじき晴れるだろうと鷹をくくっていたものの、これまでの好天続きから下り坂へ天候変化の兆しのようだ。しばしベンチに座って考えたが、荒れ模様になるかはわからないのでここまで来たら行けるところまでは行くことにする。
 分散してロッジなどが建つカルス村の中を歩いて行く。中心部グロースドルフからブラウスピッツェ(2575m)の直下へ向かう以前のリフト(ガイドブックに紹介されている)は運休中だったので、新しくできたゴンドラの乗り場へ向かう。付近の小さな宿はスキーシーズンのみらしくほとんど休業中、ネットで見ると安い空室が見つからないのはこの状況だからなのか。片道料金が24.5Euroとちょっと高めのゴンドラに乗り込むと、シマロス(2405m)まで一気に運び上げてくれる。かなり雲が湧いてきて、その切れ目から周囲の山々が所々望めるという状況。先ほどまで見えていたグロースグロックナー山頂は完全に雲の中に隠れてしまった。ゴールトリートというマトライ側から 上がるリフト駅に続き、ヨーロッパパノラマ道という名前までついているのにこの天気は残念。運休中のリフトを利用するのに比べてスデーテンドイツの小屋までの距離は少し長くなる。黄色の道標に所要4時間と記されている。逆側のローテンコーゲル山頂には近いのだが、展望は期待できないし往復すると時間余裕もなくなるので山頂を往復するのは止めた。
スデーテンドイツトレッキングルートを歩く、前方はケンドルシュピツェから続く稜線
車も通れる幅広の林道を下った鞍部のカルスマトライヤーテルル(2207m)に山小屋があり、売店や食堂も営業している。ゴンドラを利用しないで歩いてきたハイカーも立ち寄るのか、この小屋付近だけ人がやけに多い。
 スデーテンドイツトレッキングルートという山道のコースに入り、カルザーヘーエ(2434m)へ上る。運休中だったブラウスピッツェのリフトを利用したとすると最初にここまで上がってこれたわけだ。 この先は稜線の左側をトラバースするようになる。天候のせいなのか歩いている人に誰も会わない。ガスがかかったかと思うとまた視界が出てきたりを繰りかえし、それなりに周りの山々を望むことはできた。稜線を見上げると迫力ある岩場が露出していて壮観であり、部分的に岩場にワイヤーロープが設けられたやや険しい個所もあるが、おおむね草原状でお花畑も楽しめる。ブラウアークノップフ(2593m)を巻き終えた先で稜線の鞍部に上がった所がホーエストール(2477m)、ブラウスピッツェを経てカルス側に下るなどの複数のハイキングコースが分岐している。さらに正面にケンドルスピッツェ(3085m)からブレッターバンドスピッツェ(2887m)に続く稜線を見ながら進んでいく。岩のごろごろした平原の中をしばらく歩くと、正面のデュレンフェルト(2823m)というコルへ向けての登りになる。軽くしたとは言えワインの残りもあって、全荷物を背負って歩き続けるのは結構しんどかった。コルの手前でSTEEPと書かれたケンドルスピッツェ山頂への上級コースが分岐する。コルで尾根を乗っ越した先は急な下りでワイヤーロープが設置されている。
山頂手前、クラインムンタニッツから下降部の岩場を見上げる
またSTEEPと書かれたグラーデッツ(3063m)山頂への上級コースが分岐し、前方に本日泊まる予定のスデーテンドイツヒュッテが見えてきた。背後には明日登りたいムンタニッツの稜線が続いている。切り立った険悪な岩山というよりは比較的どっしりとした山容で雪渓がたくさん残っているので、日本の高山の雰囲気にも近い感じだ。
 雪渓を横切り、平らな湿原を横断していくと待望の山小屋に到着。2食付きで48Euro、スリーピングバッグが必要というので寝袋のことかと思い有料で貸し出してもらうと、寝具に直接体が触れないための筒状のシーツのことだった。これならシュラフカバーを持参すれば事足りる。グルースグロックナーの小屋でも必要だったが、混雑のためどさくさにまぎれて借りずに済ませたわけだ。小屋はガラ空きで、結局同宿者はラガー(大部屋)にもう一人の男性と、個屋に男性2人組の計4名だけだった。雲間から眺められる展望も良く、超えてきたデュレンフェルトの左にグラーデッツ、右にブレッターバンドシュピツェ、さらにマトライの谷を隔てた先に2600m前後の小さなピーク群が横長に連なっている。雨は降ってないので外の池のほとりで一杯やってから、ひと寝入りのつもりが7時まで寝てしまい小屋の人に起こされ、あわてて食堂へ行き準備をしてもらう。鶏肉キノコソースのポテト添えは和風な感じで食べやすく生ビールと頂く。あとは茹でたさやえんどうだけが山盛りになったサラダに自家製パイのデザート。種類が偏ってはいるが山の上としては上出来と言えよう。他の人はほぼ食べ終わり、2人組はドイツ語で雑談、もう一人は静かに書棚の本に読みふけっていた。食後に書棚の本をあさってみるとほとんどは関係ないものだったが、分厚いオーストリアの登山案内本が、ドイツ語ながら写真も載っていて興味深い。スイスの4000mのようには目立たないけれども、エキスパートでなくても登れる隠れた名山が無数に存在していると思う。
 翌朝は雨模様だったが視界はあったので予定通り山頂を目指す。街のホテルに比べると寂しい朝食を済ませ、荷物を預けて昨日より身軽になって出発。登るにつれガスの中に入って視界はゼロとなってしまった。左側へすべりやすい道を急登して尾根に出たところで、右へ方向を変えて最初のピークとなるウンターヴェラッハコップフ(2960m)へ。小さなピークをいくつも越えながら高度を上げる。風もさほど強くは無く、道はなだらかで雨も小降りなので特に難儀することはなかった。前衛のクラインムンタニッツ山頂に登りついて一服していると、ガスが晴れて山頂方面や谷を隔てて雪をかぶった山々が見えた。ほんの1分程度の出来事で後は再びガスの中。おそらくベネディガー山群の最南部、ヴィルテンコーゲル(3021m)からワイススピッツェ(3300m)のあたりが見えたかと思う。この先は稜線の左側の急な岩場の下りでワイヤーロープが設置されている。足場はしっかりしていて特に困難は無いが、下から見上げるとピナクル状の突起へのナイフリッジがすごい迫力だ。岩場を過ぎると一転してひたすら平坦な道になる。右手は断崖になっていて、火口壁のふちを歩いているような感じだ。最後にダラダラと登っていくと十字架の立つ広い山頂だ。完全にガスの中でさぞかし展望が良さそうな所かと想像するのみ。15分ほど待っても晴れる気配は無いので下りにかかる。雨はあがってきたが相変わらず雲が立ち込めたままだ。標高を下げると視界がきくようになり、池のほとりのヒュッテやブレッターバンドスピッツェなどを眺めながら下る。ここまで私一人完全に山を独占状態だった。

雪渓と岩ばかりの荒涼とした尾根をたどる スデーテンドイツヒュッテを見下ろす、左のピークはブレッターバンドスピッツェ

 小屋を後にマトライへ向け牧場の中をぐんぐん下っていく。ここへきて青空が覗くようになり何ともタイミングが悪い。下から次から次へ登ってくる多数の登山者グループとすれ違った。明日は日曜で天気予報も晴れだからか。昨晩とうって変わって小屋は満員になりそう。突然30頭ぐらいのヤギが駈け下ってきて取り囲まれたのでひっくり。登山者が与える食料をねだっているようだが、残りは少なく不自然なことでもあるのでゴメンと言って失礼する。途中スタイパーアルムという集落の中を通リ抜け、のどかな山村で暮らす人々に挨拶をしていく。民宿もあって、こんな所にのんびり滞在する休暇の過ごし方もあるようだ。左に入っていくと車道が通じているようだが、歩きなので514番のハイキングコースを直進する。所々民家やロッジが建っていて道が交錯する所も黄色の道標のおかげで迷う心配はない。眼下に教会の尖塔を中心に広がるマトライの町が見えてくるが、車道に出てから町までが結構遠い。車の往来の激しい街道の脇を歩き、スノーシュレッダーのトンネルの先から再び山道へ入る。街はずれの畑の中を歩いてやっと町の中心部に到着。
 バス乗り場がわからずうろうろして案内所で訊いてやっと確認できた。土曜日の午後はリエンツ行きのローカルバスが運休で、キッツビュールから山越えで来るバス1本しかない。近くをしばし散歩したあとバスの時間までカフェに入って一服。青空がすがすがしいが、北よりの風が結構強く、標高の高い山は雲がかかったまま。先日までの街の暑さは消え去って、天気の変わり目に完全に空気が入れ替わった感じだ。ゴールトリートへのリフトも動いていない模様。カルスよりはひと回り大きい街だがスキーシーズン以外は閑散となってしまうようだ。バスは20分も遅れてやってきた。午後1本しかないためか座席はほぼ満席でとても混んでいた。リエンツの案内所で泊まれる宿を尋ねると、鉄道のガードをくぐって10分ほど歩いた街はずれのファルケンキャンプ場に隣接した、朝食付52Euroの手頃な所を教えてくれた。外は雷雨模様ということもあり、付属のレストランで夕食にする。ローカルフードのクネーデル入りスープとお勧めの各種焼肉グリル盛り合わせはボリューム満点。生ビールジョッキは当然2杯。腹いっぱい食べて街中のレストランよりもずっと安くて味も良かったので大正解であった。ただ別のテーブルでカードゲームに熱中しているグループが大声を出してうるさかったのが難点であった。

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