1月10日 快晴(風やや強い)
C2(6:15)…インディペンデンシア小屋6400m(8:38/9:08)
…グランカナレッタ下(巨岩の下)6700m(11:20/11:40)
…稜線に出る6900m(13:20/13:40)…頂上6959m(14:15/14:48)
…インディペンデンシア小屋(16:40/16:45)…C2(17:20/18:30)
…C1(19:30/19:50)…B/C(20:50)
明るくなると同時に完全装で出発、今日のために何日間もかけて準備してきたわけ
で、今までになく気合いを入れて行く。出発時にFさんが体調悪く断念。急斜面を稜線
コルに出るまでにYaさん・Nさんも相次いで断念。これで残念ながら、Mさん以外
女性全員リタイヤ。
朝、雲海上に写るアコンカグアの影
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コース中唯一雪渓を横断する部分
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グランカナレッタの上部にそびえるピナクル
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セロ・クエルノの氷河の方向に、その先の地平線の雲海上に逆さアコンの影が映って
いる。頭上のアコンのピークは少しずつ姿を変えながら近づいてくる。視界も刻々広が
り、また新たに目にするピークが増える。相変わらず単調なジグザグ道を一歩一歩踏み
しめ、いくつかのパーティーに抜きつ抜かれつしながら、3ピッチ目にインディペンデ
ンシア小屋着、大休止。時間的にはまだ1/3しか来ていない。ここまでの状態で、各
人アタックするか判断することになっていた。私は行動食や写真や深呼吸や記録など自
分のことで忙しく、他の人の様子を気にする余裕がなかったが、この段階でOさんは
一方的に下山命令を受けたことを後から聞いた。
インディペンディアからひと登りで、尾根を乗越してグラン・アカレオ上部の大トラ
バースに入る。日陰になると同時に強風が吹き上げてきて猛烈に寒くなるが、それなり
の装備をしているので耐えられないことはない。トラバース中、コース唯一雪渓を横切
る箇所がある。OさんとTさんは雪渓手前で下山、Oさんの分も含めて登頂してくる
と約束して別れる。一般参加者は4人になってしまって寂しい。
雪渓では、遠藤さんとリトさんでFIXザイルを張ってくれ、ステップで通過(ピッケ
ル・アイゼンは軽量化の為あえて持参していない)。雪がしまっていて少し緊張する。
私は先頭で雪渓を通過した際、緊張もあってこれまでのペースよりかなり早く歩いた
ため、渡り終えたとき急に呼吸が苦しくなり改めて高度の影響を認識した。雪渓を渡り
終えた所は足場のとても不安定なガレ場で、本能的に足場のましな所まで行こうとみん
なで上がっていく状態となり、後ろの遠藤さんからこんな高度で競争したら登れるわけ
ないとたしなめられた。腰をおろす場所が無く、休憩できる岩場の所まできついピッチ
となった。
岩が積み重なったグナンカナレッタ(大クーロワール)はもう頭上だ。その入口とな
る巨岩の下で大休止。トイレに立った際、またうっかり普通に歩いてしまい、その後急
に息が苦しくなった。これは恐いなと思い、この後は意識的に呼吸のピッチを早めて
歩くことにした。グランカナレッタの通過は、リトさんが雪の上などなるべく足場の良
いルートを選択してくれ、足場の不安定さはこれまでのガレ場のようなものだった。頂
上との高度差は200mで目の前に見えるのだが、ペースは加速度的に遅くなる感じ。
早めに右側に、巨岩の上方にそびえるピナクルの先に続く尾根へ上がるルートを選択
。尾根に出た所の休憩(巨岩から2ピッチ目)で、私はハイピッチの呼吸を続けても息
が苦しく、手足のしびれまで感じてとても出発できそうになかったので、よもや限
界かと遠藤さんに訴えた。すると「みんな同じように症状が出てる。水を飲んで行動食
を食べておちついて深呼吸せよ」との指示で、一所懸命呼吸するのをやめて落ち着いて
指示通りすると、症状がおさまってきた。よくわからないがむやみに呼吸しすぎたのが
原因だったらしい。深呼吸はゆっくりと深く行わなくてはいけないことを認識。この先
歩くペースが少しでも早まると息苦しく意識がぼんやりきたりして、とにかく超ゆっく
りペースをキープしながら、意識をはっきり持つよう自分に言い聞かせ続ける。
遠藤氏は一番症状が出てるKさんにつきっきりだ。彼が今にも眠ってしまいそうなの
でさかんに激をとばしている様子。もちろん私は自分のことで精いっぱいなので詳しい
様子はわからない。「ウオース」というかけ声とともにKさんの懸命な様子が伝わっ
てくるだけだ。
巨岩から4ピッチで南峰と北峰間の稜線に飛び出す。南峰のスパッと切れ落ちた雪壁
を突然眼前にしてワッと圧倒。あと高度差50m、頂上の人影も手に取るように見える。
あと標高差50mがこれほど辛いとは。30分以上かけてついに頂上に到達。遠藤さん,リ
トさんに感謝、他のパーティの人も含め何回も握手を交わす。広くて平らな頂上では思
いのほか風がなく、アルゼンチン・チリ国境の山々のパノラマを楽しみながらゆっくり
することができた。B/C周りの山などは、はるか下でほとんど目に入らない。Oさん
たちの分を含めて2人分楽しませていただいたつもりです。
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アコンカグア頂上にて
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南峰とチリ国境の山々
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ここまでの道のりの苦しさを忘れてひととき満足感に浸る
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つかの間の天国の後、下山の地獄が待っていた。歩き出すとまたフラフラする中、登
りとほぼ同じルートを足場に注意して下る。他の登山者による落石も常に注意しなけれ
ばならない。途中高山病で不調の登山者を何名か見かける。巨岩の下まで一気に1ピッ
チ。リトさんがデポしたザイルなどを回収。雪渓は午後になり雪が緩んでいるのでザイ
ル無しで問題なく通過。この辺からは高度の影響も無くなり、足場の悪いガレ場も終わ
り、あとはただひたすら歩くのみ。Kさんと遠藤氏は遅れている。残りの我々は、リト
さんの先導でどんどん下った。
C2に着くとどっと疲れが出て横になって寝たいところだったが、今後の日程が詰ま
ることや高度を下げた方がよく寝れることからこの日のうちにB/Cへ下山の予定。テ
ント撤収とポーターへの荷分けを手伝い個人装をパックして、B/Cまで大ザックで下
る。C1でごみとデポした靴を回収、さらに荷が重くなる。もう他の登山者は皆無の静
かな砂走りを、「疲れたー」を連発しながら気合いで下る。暗くなる直前、B/Cにた
どり着き皆様の祝福を受ける。疲れ切ってあまり話をすることができず、食欲もほとん
ど無かったけど、満足!
アタックの時は体力を使い果たしてこうなるのはいつものことだ。昨年のお正月のチ
ンボラソの時もそうだった。チンボラソと比べて、高度によるきつさは同じ位だった。
体力的には、チンボラソでは雪稜をずっとアンザイレンして行動し夜間も行動したのに
比べ、アコンの方がルートが易しく昼間だった分、楽だったという印象である。
1月12日 快晴
B/C(10:15)…プラザ・コンフランシア入口の橋(16:10/16:32)
…登山口ゲート(18:44)
コンフランシアのキャンプ地に寄らずに直接登山口へ向かうルートを行った以外は、
往路と同じ道を下山。一気に下るのは登りの時より疲れた。
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今回の登頂ツアーへさそってくれ、私が参加するきっかけとなった知人のOさんが登頂
できなかったことが心残りとなった。Oさん自身は、下山命令されたとき自分ではまだ
全然問題なく登れると思ったそうだが、リーダーには絶対服従が条件だった。登頂への
夢を破るにはあまりにも早い決定であった。登頂断念した他の同行者の方々にとっても、
安全を重視したガイドツアー登山ゆえの限界を感じさせられたことだろう。