北海道 十勝岳〜トムラウシ〜石狩岳縦走
【月日】 98年7月25〜31日
【メンバ】単独
【装備】 1人用テント,シュラフ,食料6日分
【参考】 アルペンガイド北海道の山,岳人93年6月,98年7月号,他

年月日 1998年7月25日(土)
タイム 羽田(8:27)→(JAL505)→新千歳(10:00/10:47)=(ライラック)=旭川(13:00/14:55)
=(バス)=白金キャンプ場(16:30)

 初めて本格的に北海道の山に登ったのは12年前で、旭岳〜トムラウシ〜トムラウシ 温泉と縦走、本州の山には無いスケールの大きさに感動した。その後2度に渡り北海道 の山を訪れ、羅臼・利尻・阿寒・幌尻等々巡り、富良野岳〜十勝岳の一日縦走で締めく くった。次ぎに目指すとすれば、ぜひとも十勝岳トムラウシ間を歩いて大雪山系の 縦走を完成させたいと思っていた。
 今年再び9日間の日程で北海道の山を訪れる決意をし、まず上記コースを目指すこと にする。縦走後トムラウシから天人峡温泉へ下山して他の山を巡るのも良いが、せっか くだから石狩岳方面へ縦走を継続するプランとした。体力的に厳しくヒグマにも要注意 であるが、より大きな縦走達成感を目指したい気持ちが大きかった。
 千歳経由で旭川へ入る。駅前通りのICI等で、ボンベや食料,酒の補充等買い物を済ま せ、バスで美瑛を経て白金温泉に入る。なだらかな丘に続くラベンダーやトウモロコシ やジャガイモ畑の車窓が素敵であった。キャンプ場まで同じバスで来た札幌の二人組に、 明朝望岳台までいっしょにハイヤーで行こうとさそわれ、乗ることにした。二人組は黒 岳までの縦走予定、昨年も同じコースを歩いたが雨ばかりだったので、今年も再訪した とのこと。先週はカムエクへ行き、本州の山はあまり興味無く北海道ばかり登っている という。保養センターで温泉に入り、入山祝いの焼き肉、ウイスキーにワインで札幌の 方共々前途を祝した。今年は少雪の為前半は水に注意など、アドバイスも頂くことができた。

年月日 1998年7月26日(日)
天気 曇り一時晴れ間、にわか雨
タイム 白金温泉(6:23)=望岳台(6:30/6:38)…十勝岳避難小屋(7:44/7:57)…十勝岳(10:45/11:23)
…美瑛岳(13:34/13:37)…美瑛富士(14:33)…水汲み…美瑛避難小屋(15:30)

 ハイヤーは迎車料金\2000も取られた。どうも昨日は気前良くウイスキーをおごって くれたと思った。でも日が照って暑いので、重装備での1時間車道歩きが無くなったのは非 常に助かった。何しろ避難小屋まで砂漠のように日差しを遮るものの無いスキー場の道が 続くのだから、暑くて日干し状態。出だしからしんどい思いをする。同乗者は十勝岳へ は登らず直接美瑛避難小屋へ向かうそうだ。持ち上げる酒量が相当多いらしく、非常に ゆっくり登ってくる。
 十勝岳避難小屋からいよいよ本格的に登る。幸い風向きの関係で噴煙が上空を覆い、 日が遮られた。代わりに硫黄の臭いが鼻を突く。中間の平坦な尾根に上がると、視界が広がり 美瑛岳から十勝岳の荒々しい山肌が見渡せた。時折にわか雨がぱらついたが、かえって涼しくて 気持ちよい。十勝岳を往復する登山者はそこそこ多く、ほとんどは北海道の人のようだ。 スリップに注意して不安定な崩壊地を一気に登り頂上へはあと一息。風も無く、時折日が射し おだやかな日よりの頂上であった。虫がやや多い。北海道では、目に見えない程のヌカカに要注意 と昨日教わった。
美瑛岳,下ホロカメットク山
石垣山から振り返る。遠く日高方面も望む。
 美瑛岳へ向け縦走の一歩を踏み出す。はじめは砂礫のだだっ広い平らな道、続いて斜面をトラバース 気味に下っていく。砂礫にイワブクロがたくさん咲くようになり、やがてチジマギキョウやチシマキンレイカ などのお花畑と険しい爆裂火口のポンピ沢を見下ろす。ピストンした美瑛岳頂上はガスで展望無し。先行の子連れ ファミリーと御一緒、頂上から直接望岳台へ下るという。これから下る方向には雪渓が見え、水が得られそうだ。
 鞍部へは岩のごろごろした歩きにくい下り。荷物が多数デポしてあり指導標が美瑛富士への道を 示している。私も荷物デポして美瑛富士のピストンに向かう。途中元気な女性含む大学生パーティが頂上から 戻ってくるのに会った。頂上から分岐点へ戻り、水を期待して望岳台への道を5分強行くと、雪渓末端 で豊富な水を得ることができた。
 霧雨なのでテントはやめて新しい避難小屋に入る。比較的空いていて快適だった。今朝の二人組,大雪愛山渓から はるばる縦走してきた重装備の単独の若者,白金温泉から直接登ってきて、明日オプタテシケ往復の東京からの夫婦。 皆さん北海道の山は"通"で、いろんな話を伺うことができた。 大学生は北大パーティーでテントで入山祝の宴会。水はテント場の奥にかろうじて湧き出ていたが、沸かし用という感じ。 夜7時頃、南沼からの女性2名が到着、足を痛めて時間がかかったらしい。夜、鼠が頭の上を飛んだり、食料をかじら れたりしたらしい(私のフランスパンも紛失、鼠のせいか落としたかは不明)。

年月日 1998年7月27日(月)
天気 晴れ時々曇り(霧)
タイム 美瑛避難小屋(5:10)…オプタテシケ山(7:40/7:55)…双子池(8:54/9:05)      
…1668mピーク(10:17/10:50)…二ツ沼(14:01/14:34)…南沼(16:16)

 札幌の二人組と北大隊は双子池までのんびり行程ということ。私は少なくとも三川台の下にある二ツ沼、 できれば南沼まで目指すことにする。石垣山の頂上へ道をはずれて立ち寄る。朝のうちは良く晴れて、 後方に美瑛富士と美瑛岳が大きく望め、その右に下ホロカメットクが張り出し、奥の雲海上に日高方面 まで望めた。前方はオプタテシケへ続くゆるやかな稜線と、雲海上に遥かに目指す石狩連峰とニペソツ 辺りが頂稜部のみ顔を出している。
エゾツツジ
オプタテシケ山からの下りにて
 ベベツ岳を経てオプタテシケへ。エゾツツジをはじめとして、エゾノツガザクラ,アオノツガザクラ, エゾコザクラ,チングルマなどお花畑も楽しめる。頂上では双子池からの三人組に会う。 キャンプ地で水は得られるという。 雲が出てきて、一瞬トムラウシが覗いたかと思うとまた隠れる。トムラウシはまだかなり遠くに見える。南側から見る トムラウシははっきりした双児峰で、北側から見るのと印象がだいぶ違う。 山頂を後に、600m近くも岩がゴロゴロした急坂を下る。 途中の雪渓は完全に消滅して、例年だと水が勢い良く流れるという双子池キャンプ地では、かろうじて 水が染みだしている程度で、まともな水は得られなかった。
 テント場からの平らな湿地帯は、ぬかるんで悪い道。樹林帯の登りに入るとネマガリタケの薮漕ぎと露払いを 強いられる。前方の雪渓に期待するも、道は離れていき水は得られず。ハイマツ帯に出ると次の1668mピーク までだらだらと登りが続く。途中単独行氏が衣類を乾かしながら休んでいた。南沼から露払いして来たといい、 この時間なら南沼へ行けますよと言われる。これで露払いからも解放された。1668mピークで昼食、時折晴れ間も覗く。 この先、三川台からトムラウシへの台地が上部を雲に覆われて屏風のように立ちはだかり、 その手前に小さなピークがたくさん続いているのが見える。
エゾコザクラ
二ツ沼キャンプ地付近で地面が一面ピンクに染まる
 コスマヌプリ,スマヌプリなど小さな上下を延々と繰り返す。円弧状のツリガネ山の左側にある尖ったピーク へ少し長く登る。ピークからせっかく登ったのにまたかなり下り、再びネマガリタケに悩まされる道となり 三川台へ向けた登りを頑張る。急な登りが一段落してお花畑をしばらく行くと、右に道が分かれ、何ヶ所かテント場 が作ってある二ツ沼に到着。誰もいない。付近は地面がピンクに染まる程のエゾコザクラやキンポウゲが素晴らしい。 先へ5分ほど行くと、雪渓から流れ出る豊富な水を得ることができた。冷たい水とパイン缶で元気を 出して、南沼を目指すことにする。
 水色のトカチフウロ,エゾホソバトリカブト,ミヤマリンドウ,ニッコウキスゲ,ウメバチソウなど見て 三川台へ上がる。 平らな黄金ガ原台地の右側は急峻に切れ落ち、カール地形に雪渓と多くの沼が点在するのが見下ろせる。 あいにくガスが出てきて視界が悪くなった。平らな道が延々と続き北海道のスケールを感じながらも、 疲労の度も増してきた。いい加減もう着いても良いと思いながら、少しづつ登っていくと、右にガスの中に広い 南沼が見えた。雪田を横切って沼の岸辺へ行くとテントを張った跡が有り、この先は岩峰を縫う急登で キャンプ場がありそうな様子に見えなかったので、ここが南沼のキャンプ地と決めつけて幕営した。
 実はキャンプ指定地はもっと上にあり、ここはキャンプ禁止だったのだ。しかし誰もいないし、雪が残る沼の水も 綺麗だし、エゾコザクラ,エゾノツガザクラ,アオノツガザクラ,チングルマが咲き乱れ、夕日に霧がかかると沼 の景色は幻想的で、天上の楽園のような所。沼の底からも水が湧いているらしく泡が出ている。 日暮れまで最高のひとときを過ごした。

年月日 1998年7月28日(火)
天気
タイム 南沼(10:30)…キャンプ指定地(10:45/10:53)…トムラウシ山(11:20/11:30)…ヒサゴ沼(14:00)

 昨夜から急に雨となり、今朝もかなり激しく降っている。この素敵な場所で停滞のつもりでのんびり寝ていた。 しかしガイド類を読んでいるうちに、ここは指定地でないことに気づき、移動する為にテント撤収するなら ヒサゴ沼まで3時間行程を消化することにした。南沼の正規のキャンプ地は、 南沼の岸辺に比べるとパッとしない所。雪渓もほとんど消えて水はちょろちょろ程度だった。 トムラウシ温泉からの登路をあわせ、以前に歩いたことがある道になる。
 雨のトムラウシにも数パーティが訪れていた。前回は快晴で大感激だったが、こんな日に来られた方は気の毒だ。 シマリスが愛嬌を振りまいていた。頂上を後に、大きな岩の上を伝う北沼への道はわかりにくく、 途中で間違えて左に逸れて頂上を迂回するトラバース道に出てしまう。 さらにヒサゴ沼まで岩がゴロゴロして雨の日は特に歩きにくく、ペースははかどらない。 雪渓を下ってぬかるんだ湿地帯に足をとられながら、ニッコウキスゲ咲くテント場に着く。 避難小屋は雨を避ける人で満員だったので、テントで火をガンガン焚いて、暖まりつつ衣類を乾かした。 小屋には美瑛とは別の北大ワンゲルパーティが居て、彼らのテントが熊にかじられたという話を耳にした。 まあここでは気にしてもしょうがない。

年月日 1998年7月29日(水)
天気 晴れのち曇り、夕方一時雨
タイム ヒサゴ沼(5:15)…化雲岳(6:26/6:43)…五色岳(7:34/7:50)…沼ノ原(10:45/11:50)
ヌプントムラウシ温泉分岐(12:20/12:30)…最低コル(14:50)

化雲岳にて
トムラウシ,黄金ガ原,オプタテシケ,十勝岳とはるばる来た道を振り返る
 雨は一日で上がり晴れてくれたので、予定通り石狩岳方面を目指す。雪渓の横をだらだらと上がっていくと 絶景の化雲岳。簡単な岩登りで、最高点の岩の上に立つ。トムラウシ,黄金ガ原,オプタテシケ,十勝岳と はるばる来た道を振り返り、天人峡へ下っていく忠別川を隔てて旭岳までの大雪連峰を望む。 目指す石狩岳方面は霞んで良く見えない。
 五色岳へは平らなハイマツの切り開きをたどる。沼が点在し所々ぬかるみに悩まされながらも、 大雪らしい雄大さを12年ぶりに味わう。トムラウシへ向けた多くの縦走パーティ−に会う。 五色岳頂上にも餌付いたシマリスがいた。沼ノ原方面へ進路を取る。五色ヶ原の湿原は、 エゾノリュウキンカ,ミヤマキンバイ,チシマフウロ,ヨツガシオガマのお花畑に加え、 少雪にもかかわらず残雪をまとったトムラウシの眺めが素晴らしい。
五色ヶ原のイブキトラノオ群落
 前方には平らな沼ノ原台地の右に丸い沼ノ原山。沼が点在しヒグマが好きそうな場所だが、 時折逆に登ってくる登山者に会う。林道を沼ノ原登山口まで車で入ってくるらしい。 沢筋に沿って下るようになり、湿原の中に大沼が見えてきた。霞みも晴れて石狩連峰の稜線も はっきり見えるようになった。名古屋からの単独の登山者に会って少し話す。MTBとマイカー併用で 縦走コースを日帰りで繋いでいるという。今日は沼ノ原登山口から大雪高原温泉まで、明日は石狩岳から 沼ノ原登山口をやるかもと言う。明日も石狩岳で会えるかもしれませんねと言って別れた。
 下り着いた鞍部には、道のすぐ脇に五色の水が有り、良いテント場だ。ぬかるみを登り返して いくと沼ノ原の湿原に出る。多数のブヨに襲われ虫よけスプレーで追い払う。タチギボウシと ワタスゲに彩られた広い湿原は、石狩連峰の好展望地であり、人の姿もなく気分最高。
沼ノ原にて
タチギボウシと石狩連峰の展望
大沼のキャンプ地はだだっ広い海辺のようなところで、湿原に比べると場所は良くない。 おまけに一昨年に熊にテントを破られる被害があった為、当面キャンプ禁止と書いてある。
 沼ノ原の末端の案内板の所で林道へ下る道を分けると草深い道になる。ヌプントムラウシへの 分岐までの登りは後方に沼ノ原の眺めが広がる。そしていよいよ根曲り廊下の薮漕ぎに突入。 はじめはぬかるみ。続く下りは背の高いネマガリタケの下をくぐっていく感じで道ははっきりしていた。 下り着いてから最低コルの水場へむけ上下を繰り返すところが最難所。目印も所々見かけるが、 部分的に道がはっきりせず、ネマガリタケをかきわけ悪戦苦闘。一度など鼻の穴に枝が刺さって 鼻血を出してしまう。分岐から2時間半でやっと慶応大ワンゲルの設置した水場の標識に出る。 薮を刈り取ったスペースはテント2張りがやっと。水場まで下り10分程、ネマガリタケを切り開いた 道があるが、途中急なのでスリップ要注意。 場所はさえないし、人の気配無く熊の気配を感じるが、縦走する上で地理的には便利なこの テント場でラジオのボリュームを大きくして一夜を明かす。

年月日 1998年7月30日(木)
天気 晴れのち霧
タイム 最低コル(4:30)…ニペの耳(7:00/7:33)…川上岳(8:03/8:10)…石狩岳(9:09/10:34)
…音更山(12:17/12:42)…ブヨ沼(13:43)

 1280mまで下ってきたので、ニペの耳まで600mの登り返しだ。はじめは薮漕ぎ、しだいに ダケカンバ帯になりネマガリタケの勢いも無くなってくる。岩場が出てくると、 後方に朝の大雪連峰の素晴らしい眺めが広がり、ようやく悪路から解放されたかとホッとする。

ニペの耳への登りから朝の大雪連峰
鞍部を霧が流れ、沼ノ原を隔て十勝岳〜トムラウシ,五色岳,忠別岳,旭岳,白雲岳
 やせ尾根からお花畑をたどってニペの耳に登り着く。ニペソツ山の鋭い山容がまず目に入り、 石狩岳の大きな山容と緑のカーペットのような広々した沢にも目を奪われる。ハイマツを切り開いた 稜線の道をたどっていく。所々ハイマツの枝が茂って歩きにくい。道は川上岳を巻いていくが、 ハイマツを避けて砂ザレをたどって川上岳を往復した。さらに小さなピークをいくつも越えて、 稜線を忠実に石狩岳へたどっていく。前方に女性含むパーティー有り。三角点より高いという手前の ピークを越え、頂上へ先行者とほぼ同時に到着。

ニペの耳からニペソツ山を望む
 
川上岳付近から石狩岳へ続く稜線
後方は旭岳から大雪山方面
 何と言っても黒岳から富良野岳まで大雪連峰が一望のもと。1つ1つの山のスケールの大きさが 北海道だ。行く手の音更山もどっしりした大きな山だ。御一緒したパーティーは札幌のガイドさん (その名も幌尻さん?)案内の一行で、昨晩私が泊まったコルを少し下ったクチャンベツ川の林道から、 石狩沢を遡行してきたと言う。沢にはオショロコマ(イワナの類)がたくさん泳いでいたそうだ。 途中滝などの難所は無く、ザイル無しで登れるとのこと。帰りは私のたどって きた尾根を下り、水場のコルから林道へ沢を下るということ。石狩岳日帰りの最も楽なコースだそうだ。 こんな所で、家で凍らしてきたビールや石狩沢の冷たい水をご馳走になってしまいまた感激。 反対からも数人が登ってきた。
石狩岳頂上から音更山,ユニ石狩岳を望む
 石狩岳まで来ると先も見えてきてどっと気が抜ける。頑張ればきょう下山も不可能ではないが、 下りても林道でテント泊りくらいしかなさそうなので、ブヨ沼泊まりとしてのんびり行くことにする。 シュナイダーコース分岐点にて、昨日の名古屋の単独行氏に再開、しばらく話し込む。彼は仕事をやめて 来て、一ヶ月近くマイカーで北海道を巡る予定という。昨晩私が泊まったテント場含めて、熊出没の噂が 絶えず、ここまでの道でも熊の痕跡が見られたので、沼ノ原まで行くことにやや躊躇していた様子。 隣で休んでいた人が、おそらくテントに興味を持った同じ熊の仕業で、まだつかまっていないと言う。 それでも私が泊まり札幌の沢登り組もそっちへ向かった話をすると、やはり彼も行く気になったみたいだ。 この時間で沼ノ原までは、根曲がり廊下を突破するのが大変そうだが、彼は時間については空身なら自信を 持っていた様子。
 次の音更山も大きな山で、登りはたっぷり一時間かかる。ハイマツの根に行く手をはばまれることもしばしば。 所々枯れたハイマツの根が散乱しており、これは熊が掻きむしった跡だと言われるとそう見えてくる。 一ヶ所足跡も見つけた(やや小さめで若い熊か)。改めて昨夜は何事もなくてラッキーだったと思う。 音更山頂上に着く頃にはガスが周囲を覆ってしまった。ブヨ沼までさらに一時間の道のり。
 ブヨ沼にも熊出没注意の看板があった。水汲みに行くと途中でかい雌のエゾシカに出会う。人を恐れず日暮れまで 付近をうろついて、完全に餌付いてしまった異常な鹿であった。水量豊富な良い水場で、熊が出てこないかと ビクビクしながらも裸になって水浴びする。この日泊まったのは石狩岳頂上で会った単独行氏と、入山してきた 学生5人パーティーであった。彼らは石狩岳だけで下山しその後ニペソツへ向かうという。十勝から縦走してきたと 言うと、オー!と感心されてしまった。

年月日 1998年7月31日(金)
天気 曇り(霧)
タイム ブヨ沼(5:20)…十石峠(6:06/6:14)…ユニ石狩岳(6:43/6:50)…十石峠(7:12/7:22)
…登山口(8:56/9:00)…十勝三股(10:57/12:10)=(ヒッチハイク)=糠平温泉(12:30)

 今日は風当たりが強く、朝からガスで覆われていた。潅木の下の砂地には所々コマクサ群落あり。 細かい上下を続け十石峠に下ると、周囲が眺められるようになる。でも周辺の山の上は雲の中だ。 最後のピーク、ハイマツに覆われた丸っこいユニ石狩岳をピストンする。展望得られず、頂上にはこの地に眠ると 記された某氏の墓石があった。十石峠でひとまず、縦走路の眺めや、稜線のギンザンマシコなどの 鳥たちや、ナキウサギの声に別れを告げ、緑あざやかなエゾマツやカンバやナナカマド の原生林を下る。水場をすぎるとほぼ平らな道になるが、まだ山道が続く。
十勝三股にて
ピリベツ岳と西クマネシリ岳
 大きな登山案内板の所で林道に出る。時間が早いので登ってくる車しか通らくてヒッチハイクならず。 林道を十勝三股まで歩いていくことになった。林道の前半はつまらないが、 後半は音更川のたたずまいが素晴らしかった。いかにも鮭の故郷という雰囲気。 しかし下流のダムにより鮭が遡らなくなり、熊の餌を減らす要因になっているという。
 十勝三股ではバスが朝に一日一本しか無く、三股山荘というドライブインと郵便局しか無いところ。 石狩連峰は雲の中なのに対し、反対側はタチギボウシの咲く草原の向こうにピリベツ岳と西クマネシリ岳が良く見えた。 三股山荘に入って、ビールと北海道ランチを頼む。北海道産ポテトに肉や野菜が嬉しかった。 バスが無いので、三股山荘の人に相談して、幌加温泉に泊まるから迎えに来てもらおうと電話してみたりした。 しかし幌加温泉は、ニペソツ山への登山者の予約でお盆休みまで満員ということだった。 明日のバスまで付近にテントを張って泊まっても良いと言われる(山荘に宿泊はできない)が、 ここでは何もないので、何とかヒッチハイクするしかない。外に出ると、隣の郵便局にたまたま家族に会いに来ていた、 帯広の女性二人が、もうすぐ帰るので乗っていきませんかと声をかけてくれ、糠平まで乗っていくことができた。 三股山荘の人が連絡してくれたのかもしれない。途中山の話をいろいろ聞かれた。 北海道に住んでいても彼女たちはとても山に入る気はしないと言う。
 糠平温泉は素朴な北海道らしい所で、お客さんは少なく閑散とした感があった。 のんびり糠平キャンプ場に泊まることにして洗濯をしていると、ブヨ沼にいた単独の人に会って少し 立ち話する。東京からバイクで1ヶ月かけて東北と北海道をまわっており、次はペテガリ岳だと言う。 石狩岳登山の前に、天候待ちでこのキャンプ場に泊まっていて、今日はたまたまゴミを捨てに 立ち寄ったそうだ。湯元館の露天風呂で垢落としを済ませ、東大雪博物館を見学。北海道の自然に関する 展示が豊富で、付近の地形の成り立ちや山の動植物について知見を深めた。 夕食は近くの食堂「美春」で帯広名物"豚丼"の大盛りを食す。昼間はガラガラだったキャンプ場は、 夕方になるとツーリングの若者などで一杯になった。
(後方羊蹄山に続く)


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