USAの山
レーニエ山(4392m) 登頂

年月日 2003年7月28日(月)〜31日(木)
メンバ Tさん,Oさん,私
装備 ザイル,ハーネス,スノーバー,テント,プラスチック登山靴,アイゼン,ピッケル,他 雪山装備
参考 USAナショナルパークハイキング案内(山と渓谷社),地球の歩き方「シアトル&ポートランド」,
異境に楽しむ山旅(文芸社),ホームページ Mount Rainier National Park Official Homepage,
Rainier Mountaineering Inc. ,よいよい登山隊,エバニュー「山の写真館」,他
天気 晴れ(28〜31日)
タイム パラダイス(Paradise)[11:54]…キャンプ・ミューア(Camp Muir)[19:35//] 翌日高所順応イングラハム・フラットまで
…キャンプ・ミューア(Camp Muir)[//0:30]…カテドラル・ギャップ(Cathedral Gap)[1:15/1:25]…イングラハム・フラット
(Ingraham Flats)[1:55]…岩稜の頭(Dissapointment Cleaver Peak)[4:00]…クレーターに出る[7:00]
…頂上(Columbia Crest)[7:50/8:05]…イングラハム・フラット[11:35]…キャンプ・ミューア[12:35//6:40]
…パノラマ・ポイント(Panorama Point)[9:30]…パラダイス[10:35]

 USAの山に1つも登っていないので、今年はホイットニーかレーニエに登り、ついでにヨセミテなどのハイキングもと考えたのは6月に入ってから。WASTER CLUBの仲間に話すと、行きたいという賛同者が現れ、ちょうど山渓から新しいハイキングガイドも今年発行され(そういえばカナダハイキングの時も..)、これは行くしかない雰囲気になってきた。ツアー会社やホームページでの調査で、ホイットニーは今からでは登山許可取得が困難とわかり、レーニエとすることに決定。中南米登山でしばしばシアトルを経由するたびに、飛行機から見たレーニエの山容は忘れられず、目標とするに十分の山だ。検討した結果、現地ガイド無しで全部自分達で企画することにした。航空券、レンタカー手配や登山申請も順調に進み、7/27に成田を出発した。
 シアトルに到着後、午後は装備や食料品の買出し。ついでにスペースニードルに登り、快晴の空にくっきりとレーニエの姿を望む。涼しいとは言っても汗ばむ陽気。飛行機で到着後、すぐに慣れない町を徒歩やバスで忙しく回ったので、少し疲れ気味。翌朝は、フリーウェーから州道を走りパラダイスのレンジャーステーションへ。運転をお願いしたTさんは、海外運転は初めてながらすっかり慣れた様子。登山登録は午前10時までと書かれており、少し遅刻したが特に問題なく、受付のお兄さんはスキー狂で、北海道にスキーに行ったこともあるとか。オリンピック効果でTさんの地元長野も有名、横浜よりピンと来るようだ。
 パラダイスインで腹ごしらえしてから、天気も良いので今日キャンプミュアまで上がってしまうことにした。
レーニエ山とニスカリー氷河 スカイライン・トレールにて
はじめはお花畑のハイキングコース、付近はシオガマの青とインディアンペイントブラシの強烈な赤で埋め尽くされ、ウサギギクやトラノオのような白が加わる。多くのハイカーが散策中、東洋系の顔だちの人も多く、我々にも外国人と気づかずにNativeに話しかけられ返答に窮する。グレーシャービスタ付近まで来ると、ニスカリー氷河がレーニエ山頂の高みまで続き、荒々しい岩肌とともに蒼々たる景観だ。この山の制覇が容易でないことを実感されられる。スカイライン・トレールから分岐して沢を徒渉すると、雪渓の登りになる。後方のタトゥーシュレンジの岩山群がしだいに低くなり、その向こうにレーニアと同じような形のマウント・アダムス(3751m)が見え、東側にはセントへレンズ火山も望める。荷物も重く私とOさんはバテ気味。Tさんは比較的元気、ここ毎週ボッカトレーニングしたそうでさすが! 暗くなるのは9時近くなのでゆっくり休み休み登る。同じような遅れパーティがあと2つ、彼らはペースが遅いわりに休まないので抜きつ抜かれつだ。その横を今朝の受付のお兄さんが凄いペースで抜いていった。標高差1500mを7時間半かけてやっとキャンプミュアに着いた。レンジャーが雪を整地してキャンプサイトを準備してくれていた。
キャンプ・ミュアへの長い登り タトゥーシュレンジとMt.アダムスとセントへレンズ山
疲れたので水作りとラーメンの夕食後さっさと寝る。0時前後に物音がうるさくなり、多くのパーティーが頂上を目指して出発した様子。
 翌日は休養日で楽しい1日を過ごす。ここのソーラーシステムトイレは手を消毒するジェルも置いてあって快適。順応と偵察のためイングラハム・フラットのキャンプサイトの少し上まで往復した。キャンプ・ミュアの先はロープ必要とされている。アンザイレンして目の前のカウリッツ氷河を横断、所々狭いクレバスが深く口を開けており、改めて危険地帯に居ることを認識。ガレ場をカテドラルギャップに上がる所は、キャンプ地から見ると悪そうだが、来てみると大したことない。この日は特に視界が良く、アダムスの右に整った鋭角のマウント・フット(3427m)が姿を見せてくれた。山頂に続く迫力の氷河、そして間に聳える険しい岩峰群など景色を堪能する。 早い登山者は昼前後には戻ってくる。スノーバーや登攀具類は持っていたりいなかったりまちまちだ。キャンプ周辺では登山講習の風景が見られた。ピッケルアイゼンワークなど基本的な練習が中心の様子、ガイド登山では雪山経験の少ない人も多いようだ。夕方若い女性レンジャーがテントの見回りに来て、明日登るかどうかチェックされた。コースの質問をすると、早口でまくしたてるので半分くらいしか理解できなかったが、特に問題はないようだ。Oさんは体調があまり良くないらしく、残念ながら今回は断念するということ。
キャンプ・ミュアとカウリッツ氷河
右がカテドラルギャップ、左のギャップ奥にルートが見える
カウリッツ氷河からキャンプ・ミュアを見る
正面がMt.アダムス、右に遥かにMt.フット
 深夜Tさんトップで登山開始。多くのパーティと前後連なって登るので、ヘッドランプでもルートに迷う心配は無い。昨日の到達点から目印に沿ってクレバスを迂回し、ディサポイントメント・クリーバー(岩稜)に取り付き、はじめ右へ次に左へトラバースする。この付近は一番ルートがわかりにくく、ちゃっかりガイド隊の後ろを付いていってルートミスを避けた。途中落石危険箇所があり、先頭のガイドは手前でしばらく止まってからゆっくりと進んだ。ここが最も危険な箇所であるという風な説明をしていた。そろそろ調子の悪い人がでてきて先の進み具合が悪くなる。あまり遅いパーティーは抜いていく。岩稜の頭で多くのパーティが休憩していた。中には高度障害で足元が相当危ない人もいる。この先まだかなりの標高差がある。Tさんは調子良いようだが、私は高度の影響がでてきてペースが落ちる。頂上へ向けてはクレバスを右に左に迂回して明瞭なルートができていた。斜面は大きなコブで波うっていて滑落の心配はあまり無く、数箇所でまたぐクレバスに落ちることが唯一の危険だ。夜が明けてくるころは気温も下がり、ヤッケを着込んでいても休むと寒い。最後の単調な緩い登りも、Tさんに引っ張られながら息が苦しくとても長く感じた。
レーニエ山頂のクレーター クレーターを横断した反対側が、コロンビア・クレスト最高点
 クレーターの一角に登り着くとしばし動けなかった。最高点のコロンビア・クレストは目の前にあるが、クレーターを横断して最後の登りは、ザイル解除し荷物をデポするもなかなか足が出ない。途中のケルンの所で休んでいると、先に着いた登山者が埋め込まれていたノートを渡してくれたので、私も記帳した。砂れきの道をあとわずかで念願の頂上。先着のTさんが握手で迎えてくれた。改めて景色を見渡すと、今日もアダムス,フット,セントヘレンズの三山が顔を見せてくれ、反対のカスケードの峰々の中にマウント・ベーカー(3285m)らしき姿も。クレーターの中に大人数のパーティーが集まっている。別コースからのガイド隊か、はたまた山岳会の高所訓練か。時間は早いが高度と雪の状態のことを考えると長居は禁物で下山にかかる。確かにまだ雪が緩んでいないので歩きやすく、登りの苦しさからも開放され、景観を楽しみながらの下りだ。急斜面で直下のクレバスを跨ぐ箇所にスノーバーが刺してあり、下りは念のためスノーバーを掴んでスタカットした。周りの下山者は少なく、上に居た人数からして頂上まで登れなかったパーティーも多いと思われる。岩稜の頭から山頂への大斜面を改めて振り返るとクレバスだらけ、よくルートができているものだ。重装備で単独の謎の若者が追いついてきた。はたして別コースからの頂上縦走であろうか。この先のトラバース中、キャンプミュアが岩稜のキャップから望める所がある。Oさんも2人パーティというのが他にいないので、テント場から見ていて我々が通過したのがわかったそうだ。クリーバーの落石注意箇所では先行パーティーから声をかけられ、下を彼らが通過するのを待った。固定ロープは無いが穂高のキレット縦走路といった感じである。氷河が近づくと、コースのすぐ下に大きなクレバスが口を開けているのが見え、凄いところを歩いていることがわかる。
ディサポイントメント・クリーバー(岩稜の頭)から山頂を見上げる
多くのクレバスの間を縫って登山ルートが作られている
 こうして昼過ぎにはキャンプミュアに下山することができた。私はTさんのペースに翻弄され、午後はテント内でダウンであったが、テント内の暑いこと。夕方には体調も回復して残ったウイスキーと食料で祝杯を上げた。Oさんには申し訳なかったがキャンプミュアでもう一泊して翌日早く下ることになった。トレールまでずっと雪の上で、朝はクラストしていてアイゼンを着けた。途中でアイゼンをはずすと滑りが良くて何回もコケてしまうが、スキーの要領で斜面のコブをとらえて靴を滑らせた。行きと反対方向のトレールを行こうとパノラマ・ポイントまで上がって最後の展望を楽しみ、距離が長そうなのでやめて行きと同じコースへ戻る。ハイカーの世界に戻ってきて、"Got it?",「コンニチワ」などいろんな声をかけられながらパラダイス・インを目指した。

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